2026/06/30
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FIFAの縛りを嫌うデザイナーが、ワールドカップ非公式ユニフォームを続々発表

FIFAの縛りを嫌うデザイナーが、ワールドカップ非公式ユニフォームを続々発表

メキシコのスポーツウェア企業アトレティカは、2026年ワールドカップに向けて非公式ユニフォームを3型発売した。最も人気を集めたのは、聖母グアダルーペを配したショッキングピンクの一着だ。

メキシコの独立デザイナーが仕掛ける「公式より目立つ」一着

公式キットを手がけるのはアディダスだが、ファンの心を掴んでいるのは地元の独立デザイナーたちだ。FIFA(国際サッカー連盟)の規則に縛られない自由な発想が、公式以上の支持を集めている。

メキシコ・グアダラハラ近郊のスポーツウェア企業アトレティカは、自国が共催する2026年大会を祝して3種類のジャージーを世に出した。1型目は赤褐色の生地に、羽毛をまとった蛇神ケツァルコアトルを思わせる蛇紋様をあしらう。2型目の緑には、アステカで魂を象徴する「トナリ」のモチーフが織り込まれている。いずれもメキシコの神話や信仰を下敷きにした意匠だ。

そして最も話題をさらったのが、3型目のショッキングピンクだった。中央には、メキシコの国民的な信仰の象徴である聖母グアダルーペが描かれている。公式キットなら決して許されない色と図像の組み合わせが、かえってファンの誇りを刺激したようだ。

なぜ「非公式」のほうが自由なのか

理由は単純で、公式ユニフォームには創造性を縛る細かな規約があるからだ。袖なしは禁止、ブランドロゴの大きさや配置にも制限があり、チームカラーから外れていいのはゴールキーパーの一着だけとされる。

米ビジネス誌『Fast Company(ファスト・カンパニー)』の報道によれば、FIFAの公式パートナーになるとは、こうした枠の中でしかデザインできないことを意味する。アトレティカのような独立ブランドは、その枠の外にいるからこそ、神話の蛇も聖母像も自由に乗せられる。アディダスの公式キットは緑・白・黒にアステカ調の意匠を施し、評判も悪くない。だが「縛りのなさ」という一点で、非公式勢は存在感を増している。

ジャージーがパリコレに立つ日

街着になったサッカージャージーは、いまやランウェイにまで上がっている。グアダラハラ出身のデザイナーが地元の名門チームと組み、再解釈したキットをパリ・ファッションウィークの舞台に立たせた。

その仕掛け人が、デザイナーのアントニオ・サラゴサだ。彼のブランド「リベラル・ユース・ミニストリー」は、メキシコの強豪チーム、チーバスと協業し、公式キットを大胆に作り替えたコレクションをパリコレで披露した。サッカーとモードの境界が、ここで一気に溶けていく。

動きはほかにも広がる。2016年、トランプ氏の反メキシコ発言への抗議として生まれたブランド「メキシコ・イズ・ザ・シット」は、レトロ調のメキシコ代表ジャージーを発表した。アルゴリトモ・スタジオが手がけたサテン地の長袖は、米歌手ジョー・ジョナスがメキシコシティ訪問時に着用したという。さらにファブリカ・デ・プントやオルデンといったブランドは、ジャージーをセーターやジャケットへと作り替えている。

メキシコだけじゃない、世界に広がる「着るサッカー」

この熱はメキシコ一国にとどまらない。ブラジル、ニューヨーク、英国のデザイナーたちも、古いジャージーを新しい一着へと生まれ変わらせている。

ブラジルのデザイナー、レナータ・ブレーニャは、古着のジャージーをアップサイクルし、プリーツのトップスやジャケット、パンツへと仕立て直す。ニューヨークの手作り服ブランド、ココ・カルチャーは、ジャージーをつなぎ合わせたドレスという新しい着方を提案した。英国のディレンマに至っては、ジャージーにコルセットを縫い込んだランジェリー風の一着で人気を集めている。

公式の一着はピッチの上で90分を戦う。だが非公式の一着は、スタンドや街角、そしてランウェイで、その何倍もの時間を生きていく。ピッチの外で生まれたこの遊び心が、次のワールドカップでは公式キットの常識すら塗り替えているのかもしれない。