2026/08/28
SPARKL

ザッカーバーグの『AI万人論』に専門家6人が反論、格差を広げるとの批判が噴出

ザッカーバーグの『AI万人論』に専門家6人が反論、格差を広げるとの批判が噴出

メタのマーク・ザッカーバーグCEOが8月10日に公開した宣言文をめぐり、グローバルサウスのテック報道で知られる独立系メディア「Rest of World」がアフリカやインドなど6人のAI専門家に見解を求めたところ、その多くが「AIはむしろ既存の格差を広げる」と反論した。

なぜザッカーバーグのAI宣言に格差批判が集まったのか

AIへのアクセスさえ広げれば恩恵は自然に行き渡る、という宣言の前提そのものが現実とずれているからだ。専門家たちが繰り返し突いたのは「アクセスは、必ずしも力を意味しない」という一点だった。

ザッカーバーグが公開したのは「The Future for Everyone(すべての人のための未来)」と題した宣言文で、超知能が人々の暮らしを底上げし、AIの恩恵をより広く分配する道筋を描いたものだ。国や企業をまたいでAIへのアクセスを広げることこそ「前向きなAIの未来への道」だと、彼は主張した。

これに対し、インドのシンクタンク「Future Shift Labs」共同創業者のサガル・ヴィシュノイは、その「すべての人」という言葉が誰を取りこぼしているかを指摘する。少数言語や部族語の話者、一台の端末を家族で共有する世帯、通信が途切れがちな地域。こうした「デジタル圏の周縁」に立つ人々は、宣言の視界にほとんど入っていないという。本気で数十億人を教育したいなら、投資は大きなモデルの開発だけで止まってはならず、地域の言語をデジタル化し、現地の研究者に計算資源を届けるところまで届く必要がある、と彼は説く。

「経済効果は誇張」、データセンターが潤すのは誰か

メタが宣伝するデータセンターの経済効果は「大きく誇張されている」と、アフリカのAI政策を研究するチナサ・オコロは断じる。彼女はアフリカのAI政策を扱う研究組織を率い、AI分野の多様性を推進する団体の政策責任者も務めてきた人物だ。

その根拠は具体的だ。ケニアではマイクロソフトとUAEのAI企業G42が支援する地熱データセンター計画が、送電網の制約を理由に一時停止に追い込まれている。オコロによれば、データセンターがもたらす雇用は建設期に集中し、いったん稼働すればごく少数の常駐スタッフしか雇わない。住宅価格をわずかに押し上げる効果はあっても、それが地元の賃金には結びつかないという。

さらに彼女は、環境と健康への負荷を挙げる。こうした負荷は、環境規制が弱く、法があっても厳格な監督が難しいアフリカ諸国では、いっそう深刻になりかねない。工場や鉱山が撤退した地方の小さな町を狙った大量の広告と、実際に地域へ落ちる恩恵のあいだには、大きな隔たりがある。

「英語が使え、通信が届く人」の話になっていないか

AIが個人の家庭教師になる未来は魅力的だが、そこにたどり着けるのは電気・通信・端末・英語がそろった人に限られる。ケニア出身でデジタル分野の非営利団体に籍を置くマーク・ムロビは、そう問い返す。

「AIが学びや技能の習得を助ける可能性には、最も心を動かされる」とムロビは言う。だが「すべての人のためのAI」という約束は、ある根本的な現実を見落としていると彼は続ける。誰もがオンラインにいるわけではなく、デジタルに習熟しているわけでもなく、英語でAIとやり取りできるわけでもない。安定した電力、高速な通信、手の届く価格の端末、そしてアフリカの言語や地域の知識体系への意図的な投資。それらがなければ、AIは包摂の技術どころか、既存の格差を広げる装置になりかねないという。

批判は「使えるかどうか」の次元にとどまらない。市民社会の国際連合体を共同で立ち上げたフアン・オルティス=フルーラーは、宣言文の後半が米国の規制当局や有力者に向けられ、メタが「米国の力を投射する媒体」として振る舞うことを期待されている、と読み解く。透明性と協調を語る前半と、米国の覇権を支える役割を担う後半。その二重性を彼は問題視する。別の論者はもっと辛辣で、内部告発者への報復や未成年への害の隠蔽を並べたうえで、それでも人々の利益を第一に考えていると称する姿勢を「笑ってしまう」と切り捨てた。

信頼は宣言ではなく、行動で稼ぐ

技術が本当に人の役に立つには、参加・主体性・選択・信頼の4つがそろわなければならない。デジタル分野の非営利団体を率いるプリヤ・ヴォラは、宣言文がそのうち「参加」しか語っていないと指摘する。

意味のある参加には、人々が自ら選び、任された仕組みを信頼できることが要る。政府は交通ルールを敷けても、信頼は企業が行動で稼ぐしかない。ヴォラが挙げるのは、利用者、とりわけアクセスに困難を抱える人々と共に設計すること、データとAIの使われ方を透明にすること、そしてAIが間違えたときに人々が実効的に訴え出る道を残すこと。信頼は多面的であり、その各面を開発と運用の最初から最後まで考え抜く必要があると彼女は言う。

6人の視点は国も専門も異なるのに、答えは驚くほど揃っていた。「万人のため」という言葉が本物になるかどうかは、宣言文の美しさではなく、これまで置き去りにされてきた人々の手に、その恩恵が実際に届いた時に初めて確かめられるのかもしれない。