2026/07/30
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中国の受験生がAIで大学選択。アリババが2,300万件の志望校リストを生成

中国の受験生がAIで大学選択。アリババが2,300万件の志望校リストを生成

アリババのAIチャットボット「Qwen」は7月上旬までに2,300万件の志望校推薦レポートを生成した。テンセントのAIも入試関連で2億件の相談に応じ、数千ドルかかる民間コンサル市場を揺さぶっている。

なぜ中国の受験生はAIで大学を選ぶのか

学部をやり直せないからだ。中国の大学は他学部への転部要件が厳しく、入試「ガオカオ」後の数週間の選択が、その後の職業をほぼ決めてしまう。

中国では毎年およそ1,000万人がガオカオを受ける。結果が出てから願書提出までの猶予は、わずか数週間だ。数千校・数百学部のなかから出願先を一気に絞り込まなければならない。米国の大学生が入学後に専攻を変えるのはよくある話だが、中国では転部のハードルが高く、多くの学生にとってこれは一度きりの選択になる。

重圧のわりに、学校の支援は薄い。中国の高校が進路指導を用意することは珍しく、家庭は参考書やSNSのインフルエンサー、個人契約の受験コンサルに頼ってきた。コンサル料は数千ドルに達することもある。

山東省の18歳、郭欣妍(グオ・シンイエン)もそんな受験生の一人だった。「家族も私も出願の経験がなく、SNSとAIに頼るしかなかった」と、彼女はRest of Worldに語っている。両親はバイトダンスのAI「豆包(ドウバオ)」にも学部候補を尋ねたという。「特に学びたいものはありません。ただ、将来いい仕事につながるものを探しています」

テック大手4社が競う、無料の志望校AI

アリババ、バイトダンス、バイドゥ、テンセントの4社が、2025年から相次いで志望校診断AIを無料で投入している。狙いは、チャットボットを日常生活に定着させることにある。

これらは「エージェント型」と呼ばれるAIで、各大学の過去の合格最低点を分析する。受験生の点数、興味のある職業、マイヤーズ・ブリッグス(MBTI)の性格診断、学費や気候の希望などを入力すると、合格可能性に応じて「挑戦校」「安全校」「滑り止め」に振り分けた候補リストが返ってくる。郭の場合、点数と省内順位、志望学部(法学・会計・金融)、学費の予算、住みたい沿岸都市を打ち込むと、数十の選択肢が並ぶレポートが出てきた。

規模は桁違いだ。アリババのQwenは7月8日までに2,300万件の推薦レポートを生成し、精度を高めるために300人の専門スタッフを採用したという。テンセントのAI「元宝(ユエンバオ)」は7月10日時点で入試関連の質問に2億件回答したとし、バイドゥの進学相談機能は6月末までに1,500万人が使ったと発表した。バイドゥは、人間の専門家がAIの推薦を検証すると約束している。

無料化の衝撃は、既存のビジネスに直撃する。これまで数千ドルを取っていた民間コンサルの市場を、テック大手のボットが一気に置き換えつつあるからだ。米国でも私設コーチを雇えない家庭がAIを頼り始めており、同じ現象がさらに大きな規模で中国に現れている。

AIの答えを、受験生はうのみにしない

AIは膨大な選択肢の整理こそ得意だが、間違いも犯すからだ。古いデータの引用や有力校の見落としがあり、点数の近い受験生を同じ学部へ誘導してしまう危険もある。

シアトルを拠点とする経済学者で、華東師範大学の客員教授でもある葉暁陽(イエ・シアオヤン)は、その限界を指摘する。AIは数万の学部を仕分けるのは得意でも、「自分が人生で何をしたいか」までは教えてくれない。中国メディアの検証では、古い合格データを引いたり、有力な選択肢を落としたりする例も報告されている。

リスクは軽くない。点数の近い受験生に似た推薦が並べば、人気学部に出願が集中する。もしマッチングに失敗すれば、その学生はまるごと一つの出願ラウンドを逃し、大きく格下の大学に流れかねない。

葉は今年、無料のAI進学支援プラットフォームを自ら立ち上げた。基本的な出願ルールを教え、学生が自分の進路を探れるようにするためだ。地方の学生の多くはパソコンの基本操作すら不慣れで、そもそもAIへの尋ね方がわからなかったという。「誰でもチャット画面は開ける。でも、誰もが同じように選べるわけではない」と彼は言う。「いいAIとは、学生が自分の頭で考えられるよう導くものだろう」

冒頭の郭も、AIの提案をそのまま信じたわけではなかった。公式の進路ガイドブックや、SNS「RedNote(レッドノート)」で先輩たちが書き込む体験談と照らし合わせた。寮の設備が整っているかも気になったという。「やっぱり、生身の人の経験のほうが信頼できます」。膨大な選択肢を一瞬でさばくAIの隣で、彼女が最後に頼りにしたのは、同じ道を歩いた人間の声だった。