2026/06/16
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FDAが日焼け止めの新成分を約20年ぶり承認。欧州・アジアで定番のUVA防御成分がついに解禁

FDAが日焼け止めの新成分を約20年ぶり承認。欧州・アジアで定番のUVA防御成分がついに解禁

FDA(米食品医薬品局)は約20年ぶりに、日焼け止めの新たな紫外線吸収剤「ベモトリジノール」を承認した。UVAとUVBの両方を単独で防ぎ、欧州とアジアでは数十年使われてきた成分だ。

アメリカの日焼け止めが抱えてきた弱点

アメリカで売られてきた日焼け止めは、UVB(日焼けや赤み)には強いが、しわ・老化、そして皮膚がんにつながるUVAの防御が弱点だった。今回承認された新成分ベモトリジノール(bemotrizinol)は、その両方を単独で防ぐ。

シアトルの皮膚科医でアメリカ皮膚科学会フェローのヘザー・ロジャースは、この承認を「とても大きな出来事だ」と語る。理想は、波長の長いUVA(老化やしわの原因)と、波長の短いUVB(日焼けの原因)を幅広く防ぐ「ブロードスペクトラム」の日焼け止めだ。どちらの紫外線も皮膚がんを引き起こしうる。

ところが、これまでアメリカの化学的日焼け止めはUVAを防ぐためにアボベンゾン(avobenzone)という成分に頼ってきた。シンシナティ大学で化粧品化学を教えるケリー・ドボスによれば、アボベンゾンは光に弱く、日光を浴びると急速に分解し始める。分解の過程で肌を刺激する分子を放出することもあるという。ベモトリジノールは単独でUVA・UVBを防ぎ、しかも分解が遅い。「2時間より少し長くあいても、守りはより多く残っている」とロジャースは説明する。それでも塗り直しは2時間おきが推奨だ。

なぜFDAの承認に20年もかかったのか

欧州とアジアで数十年あたりまえに使われてきた成分が、アメリカで承認されるまでに約20年を要した。理由ははっきりしている。アメリカでは日焼け止めが化粧品ではなく「市販薬(OTC)」として規制され、安全性と有効性の厳格な試験が義務づけられているからだ。

欧州では日焼け止めは化粧品に分類される。一方アメリカでは薬と同じ扱いになり、承認のハードルが一気に上がる。「非常に高コストで、時間もかかる」とドボスは言う。実際、欧州の化学企業DSM-フィルメニッヒ(DSM-Firmenich)は、ベモトリジノールのFDA承認を得るために20年以上をかけ、少なくとも約1,800万ドルを投じてきた。一本の成分を棚に並べるための、気の長い投資だった。

「分厚い安全性データ」という逆説

皮肉なことに、その長く厳しい試験のおかげで、ベモトリジノールは現在アメリカで承認されている他のどの化学的紫外線吸収剤よりも多くの安全性データを持つ。環境団体EWG(環境ワーキンググループ)の上級科学者アレクサ・フリードマンは「このデータの裏づけがあることこそ刺激的だ」と話す。

動物試験では生殖への害は確認されず、ヒトでの臨床試験でも、繰り返し塗っても肌を刺激しないことが示された。さらに分子が大きいため、皮膚から血流へ吸収されにくいという。これが重要なのは、アメリカで使われてきた一部の化学的UVフィルターが血流に吸収されると研究で示され、SNS上の誤情報を伴う日焼け止め敬遠の流れを生んでいたからだ。皮膚がんは最も一般的ながんであり、ロジャースはこの流れを懸念する。「必要なのは、人々が実際に使い、信頼できる日焼け止めだ。この成分はそれを可能にする」

塗り心地まで変わるかもしれない

ベモトリジノールがもたらすのは、防御力だけではない。日焼け止めの「使い心地」そのものを変える可能性がある。非刺激性とされるこの成分は、これまで化学的日焼け止めのベタつきや刺激を嫌って避けてきた人にこそ朗報になりうる。

結局のところ、どんなに高性能な日焼け止めも、塗らなければ意味がない。心地よく、信頼でき、毎日続けたくなる一本があるかどうかが、肌の未来を分ける。欧州とアジアで数十年あたりまえだった成分が、ようやくアメリカの棚に並ぶ。塗るのが面倒で遠ざけてきた人ほど、その恩恵を静かに受け取っていくのかもしれない。