2026/07/27
SPARKL

女性のADHDは症状が違い、大人まで気づかれない。寿命9年短縮の英調査も

女性のADHDは症状が違い、大人まで気づかれない。寿命9年短縮の英調査も

米国では2023年時点で約700万人の女性がADHDと診断されている。だが子ども時代には男児が女児の2〜3倍の割合で診断され、多くの女性は大人になるまで見過ごされてきた。

なぜ女性のADHDは症状が違い、見逃されるのか

女児のADHDは、教室を乱す多動や衝動としてではなく、「気が散る」「片づけられない」「上の空」といった目立たない形で現れるためだ。だから周囲は気づかず、診断は男児より何年も遅れる。

デューク大学「女性とADHDセンター」共同ディレクターで臨床心理士のジュリア・シェクターは、女児の症状は見逃されやすいと指摘する。落ち着きのなさが外に爆発せず、内側にこもるからだという。その結果、女性は「自分のどこが悪いのか」と悩み続け、不安障害やうつと診断されて治療を受ける。だが根っこにあるADHDは手つかずのまま残る。

「そうした不安やうつが本当に存在することもあります」とシェクターは言う。「でも別のケースでは、何年も診断されず放置されたADHDの二次的な結果なのです」。1980年代に子ども時代を過ごしたケイト・ジャービスも、その一人だった。小学校では成績優秀で、夜のうちに歯ブラシへ歯磨き粉をつけておくほど几帳面な子だったという。ところが思春期を境にすべてが崩れ、集中できなくなり、成績は落ちた。教師から「やればできるのに」と書かれるたび、彼女は自分の性格の欠陥だと思い込んだ。ADHDと診断されたのは、30代後半になってからだった。

見逃された年月が払わせる「健康の代償」

治療されないまま過ぎた年月は、心だけでなく身体にも跳ね返る。英国の大規模調査では、ADHDのある女性は、ない女性より平均で約9年早く亡くなっていた。

その差は、ADHDのある男性と比べても2年早い。数字は、この障害が「遅刻の言い訳」では済まないことを裏づける。女性のADHDを長年研究してきた発達小児科医のパトリシア・クインによれば、ADHDのある女性は友人関係に悩みやすく、パートナーからの暴力を受けやすく、10代での妊娠も経験しやすい。無価値感や自傷、自殺企図のリスクも高いという。

身体的な病気も例外ではない。クインは、ADHDのある女性で肥満・摂食障害・2型糖尿病・心血管疾患の発症率が高いと説明する。背景にあるのは、衝動性、睡眠の乱れ、健康的な習慣を維持できないこと、症状を抱え続ける慢性的なストレス、そしてドーパミンを求めて偏った食事に走りやすいことだ。ばらばらに見える症状が、生活習慣を通じて一本の線でつながっている。詳しくは米公共ラジオNPRの報道がまとめている。

「なんとかやってきた」が崩れる中年の限界点

多くの女性は症状を隠し(専門家はこれをマスキングと呼ぶ)、努力と工夫で長年しのいでいく。だが仕事や育児で生活が複雑になると、その埋め合わせのしくみが限界を迎える。

女性のADHDを専門とする臨床心理士のエレン・リットマンは、この破綻が中年期に集中すると語る。若い頃は気合と段取りでカバーできたことが、役割が増えるほど処理しきれなくなる。そしてある日、「もう回らない」という臨界点に達する。近年、大人の女性の診断が急増している背景には、こうした限界点と、性差への理解の広がりの両方があるようだ。子どもの頃は男児に偏っていた診断率も、大人になると男女の差はほぼ消える。

名前がつくことから始まる回復

診断は終わりではなく、出発点になる。ジャービスは30代での診断を「革命的だった」と振り返る。25年間格闘してきたものに、名前と原因と症状があると知った瞬間だった。

もちろん、名前がつけば翌日から楽になるわけではない。「正体がわかったからといって、すぐ直せるわけではありません」とジャービスは言う。彼女は一時、「自分を直さなければ」と追い詰められもした。それでも、性格の欠陥だと信じ込んできた25年間に別の説明が与えられた意味は大きい。ADHDは適切な理解と治療で、暮らしやすさを取り戻せる状態だ。まず必要なのは、薬でも根性でもなく、正しく気づかれることかもしれない。

25年間、正体のわからないものと格闘してきた女性にとって、診断名がつくことは「自分を直せ」という号令ではない。ようやく、責めるべきは自分ではなかったと気づける出発点になるのかもしれない。