インドのタタ・モーターズのEVは1kmあたり平均106ワット時(Wh/km)しか消費せず、国際クリーン交通委員会(ICCT)が世界22社を対象にまとめた電費ランキングで首位に立った。マヒンドラが113Wh/kmで続き、テスラは3位、BYDは4位だった。
なぜインドのEVは電費で世界一になれたのか
小さく軽い車体と、出力やバッテリー容量を欲張らない設計思想が効いている。航続距離や加速の派手さより、限られた電力を1kmでも遠くまで走らせる「倹約」に振り切ってきたためだ。
インドのメーカーが得意とするのは、もともと安くて壊れにくい大衆車だった。その発想をそのままEVに持ち込んだ結果、電気を無駄に食わない小型EVが生まれた。車体が軽ければ同じ電力でより遠くまで走れる、という物理の理屈にかなっている。
派手なスペック競争から一歩引いた設計が、皮肉にも世界で最も電力効率の高いEVを生んだ。豊かな国の「もっと大きく、もっと速く」とは逆の発想が、ランキングの頂点に届いたことになる。
王者テスラとBYDは3位・4位にとどまった
ICCTが世界22社を評価したランキングで、テスラは3位、BYDは4位に位置した。上位EVの平均電費は131Wh/kmで前年からほぼ横ばいであり、タタの106Wh/kmという数字がいかに際立つかがわかる。
しかも業界全体の改善は足踏み状態にある。ICCTが世界の主要22社を対象に公表したランキングによれば、電費を改善できたのは8社にとどまり、12社はむしろ悪化した。多くはラインナップにSUVなど大型車が増えたことによる後退だという。
世界最大のEVメーカーであるBYDも、EVの代名詞であるテスラも、電力効率という一点ではインドの勢いに譲った。規模や知名度と、1ワット時をどこまで大切に使うかは、別の話らしい。
電費の王者は、充電速度では最下位だった
その一方で、タタ・モーターズは充電速度で評価22社中の最下位、航続距離でも下から6番目に沈んだ。電費の高さは、裏を返せば大容量バッテリーや急速充電に頼らない設計の結果でもある。
ここにインドEVのジレンマがある。電気を無駄にしないのは美点だが、充電に時間がかかり一度に走れる距離も短ければ、消費者は購入をためらう。実際、インドの新車販売に占めるEVの比率はいまだ5%未満で、世界平均の25%に大きく後れを取っている。
倹約は強みであると同時に、普及の足かせにもなりうる。電費世界一の称号だけでは、街にEVは増えていかない。
インドが狙う2030年、EV比率30%への賭け
インド政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げている。現在は5%未満だが、自動車メーカーに課す燃費・排出規制の強化がこの流れを後押しする見通しだ。
インドは中国・米国・ロシアに次ぐ世界4位の石油消費国でもある。EVを増やすことは排出削減にとどまらず、石油輸入の圧縮、エネルギー安全保障、国内製造業の育成にも直結する。政府は現在、2027年から2032年にかけて規制をさらに厳しくする第3段階の設計を進めていると、メディアのRest of Worldは伝えている。ICCTインド代表のアミット・バット氏は、この規制を「進歩的で野心的だ」と評した。
倹約で頂点に立ったインドのEVが、次に大容量バッテリーと高速充電をどう取り込むか。テスラやBYDを電費で抜いた技術力なら、その壁も見た目ほど高くはないのかもしれない。





