Pinpointは1つのコレクションに最大20万ファイルを格納し、100以上の言語で音声や動画を文字起こしできる。2026年6月3日まで記者と研究者だけに開かれていたが、いまは誰でも無料で使える。
Google Pinpoint の使い方は「探す」に特化している
Pinpoint(ピンポイント)の本質は、膨大なファイルの山から目当ての一文を瞬時に掘り当てることにある。手書きメモも、スキャンしたPDFも、数時間の録音も、すべて検索可能なテキストに変えてしまう。
Fast Companyが紹介するこの無料ツールを開発したのはグーグルだ。使い方そのものは拍子抜けするほど単純で、複雑なメニューもコマンドもない。PDF、メール、音声、動画、手書きノートをアップロードすれば、あとは検索ボックスに言葉を打ち込むだけでいい。
特筆すべきは、文字起こしと光学文字認識(OCR)の働きである。録音した会議や講演を100以上の言語でテキスト化し、ホワイトボードを撮った写真の文字まで拾う。さらにPinpointは、コレクション内で頻出する人名・組織名・地名を自動で一覧にしてくれる。気になる名前をクリックすれば、それが登場する箇所へ一足飛びに移動できる。
無料で何ができるか、20万ファイルと「データ抽出」
無料アカウントでも1コレクションあたり20万ファイル、コレクション数は無制限で使える。記者と研究者は申請すれば100GBの「Pinpoint for Professionals」を、一般ユーザーは1GBから始められる。
数の上限は同種のツールより大きい。音声・動画は1ファイルあたり最長2時間・8GBまで対応し、グーグル自身のNotebookLM(ノートブックエルエム)よりも寛容だ。ニュースレター『Wonder Tools』を主宰するジェレミー・キャプランは、グーグルアカウントごとに別々のPinpointアカウントを作れば容量を増やせると助言する。
ベータ版のAI機能は80以上の国で順次開放されている。なかでも実務に効くのが、最大100件の文書から必要な情報を抜き出して表計算シートにまとめる「データ抽出」だろう。各データには元の文書へのリンクが残るため、出典をたどり直せる。ほかにも、数千のファイルを指示通りに自動分類する機能、最大100件の文書から時系列を組み立てる機能、2〜3件のファイルを並べて差分を見る機能がそろう。ただしキャプラン自身、AI機能はまだ取りこぼしがあり、人名を誤って文字起こしすることもあると断っている。
NotebookLMとの違いは「生成」か「整理」か
同じグーグル製でも、PinpointとNotebookLMは役割がはっきり異なる。NotebookLMが資料からスライドや音声ポッドキャスト、レポートを「生み出す」のに対し、Pinpointは大量のファイルを「整理して探す」ことに徹している。
扱える規模も対照的だ。NotebookLMの無料版が1ノートあたり50ファイルなのに対し、Pinpointは1コレクションに20万ファイルを呑み込む。メール、マルチメディア、スキャン画像といった雑多な形式を、桁違いの量で束ねられる点が強みになる。
キャプランが勧めるのは両者の併用だ。まずPinpointで集めて整理し、文字起こしまで済ませる。そのうえで本当に重要なファイルだけをNotebookLMに移し、レポートやスライドへ仕上げていく。探す道具と作る道具を分けて使う発想である。
まず試すなら、公開コレクションから
いきなり自分のファイルを上げる前に、Pinpointの「Explore(エクスプロア)」で公開データを触ってみるといい。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど200を超す報道機関の文書群が並び、検索やフィルターの感触を無料で確かめられる。
公開コレクションには、JFK暗殺の記録や、86,018点に及ぶ80年分の米外国代理人登録資料まである。検索の練習台としては申し分ない。プライバシー面では、アップロードした文書は公開しない限り非公開で、AIモデルの学習にも使われないとグーグルは明言している。ただしファイルはグーグルのサーバーで処理されるため、機微な資料の扱いには慎重さがいるだろう。
針一本を探すための干し草の山を、これほど安く積み上げられる時代はなかった。まずは公開された他人の山で、自分なりの使い方を見つけてみてはどうだろうか。





