米CDCの報告によると、2021〜2024年の調査で妊娠中に飲酒したと答えた女性は15.2%にのぼった。2018〜2020年の13.5%から上昇している。飲んだ女性の約3人に1人は、一度に4杯以上の「ビンジ飲酒」をしていた。
なぜ妊娠中の飲酒が増加に転じたのか
コロナ禍で広がった飲酒習慣が、パンデミックが収まったあとも妊婦の間に残ったためだ。CDCは、飲酒がストレスへの対処として使われている可能性を指摘する。
医療系メディア「Stat(スタット)」が最初に報じたCDCの報告によると、2021〜2024年の調査で妊娠中に飲酒したと答えた女性は15.2%にのぼった。2018〜2020年の13.5%からの上昇で、増加の起点は2020年あたりにある。社会全体でパンデミック下の飲酒が増えた時期と重なるが、その傾向は一過性で終わらなかったようだ。
中身を見ると深刻さがわかる。飲酒したと答えた女性のうち、約3人に1人は一度に4杯以上を飲む「ビンジ飲酒」を経験し、15%近くは週に8杯以上の「ヘビー飲酒」に及んでいた。とりわけ、未婚の女性と「頻繁に精神的苦痛を感じる」と答えた女性で、飲酒する割合が高かった。報告書は、飲酒がストレスや負の感情をやわらげる手段になっている一方で、かえってストレスの回路を乱す恐れもあると記す。
ただし、この数字には限界もある。母数は電話調査で、過去30日に飲んだと答えた女性のなかには、妊娠に気づく前に飲んでいた人も含まれうる。妊娠8カ月の女性と、妊娠を知って数週間の女性が区別されていない点も、報告書自身が認めている。
「1日2杯まで」から「一滴も安全でない」へ
妊娠中の飲酒をめぐる医学的な基準は、半世紀で大きく塗り替えられた。1970年代に「1日2杯まで」とされた助言は、いまや「安全な量は存在しない」に置き換わっている。
そもそも妊娠中の飲酒が社会的に許されない行為になったのは、そう昔のことではない。米国で認識が変わり始めたのは1970年代だ。FDA(米食品医薬品局)とCDCが初めて警告を出し、妊婦のアルコール摂取を「1日2杯まで」に抑えるよう勧めた。当時はまだ、ゼロが前提ではなかった。
現在の公式見解はもっと厳しい。妊娠初期の少量飲酒は早産や低体重のリスクが比較的小さいとする研究もあるが、それでも妊婦には完全な禁酒が勧められる。胎児がアルコールにさらされると、「胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)」と総称される先天的な障害や発達の問題を抱える恐れがあるからだ。米国では小学1年生の1〜5%が、この影響を受けていると推計される。
責めずに支える、出生前ケアの次の一手
CDCが解決策として挙げるのは、罰ではなく支援だ。健康スクリーニングや警告ラベル、追加の課税が、胎児へのアルコール曝露を減らしうるという。
注目すべきは、飲酒のリスクが最も高かったのが「頻繁に精神的苦痛を感じる」層だったという点だ。これは本人の意志の弱さというより、ケアの届かなさに近い。報告書が行動健康スクリーニングを出生前ケアの重要な要素として挙げるのも、飲酒を入口に、その奥にあるメンタルヘルスの不調へ手を伸ばそうとしているからだろう。
FASDは、防ぐことのできる障害だ。妊娠中に飲まなければ、リスクはゼロに近づく。だからこそ、増え続ける数字を前にして問われるのは、妊婦を責める言葉ではなく、しんどさを抱えた人がアルコール以外の出口にたどり着ける仕組みなのかもしれない。





