バークシャー・ハサウェイは2026年7月24日、米6位の住宅メーカー、テイラーモリソンを1株72.50ドルで買収完了した。既存のクレイトン・プロパティーズと合わせ、現場建築型では全米4位の住宅メーカーに躍り出る。
なぜ冷え込む住宅市場でバークシャーは動いたのか
バフェットの後継グレッグ・アベルが、短期の値崩れを織り込んだうえで長期の住宅需要に賭けているからだ。米住宅メーカーはコロナ期の熱狂の反動で調整局面にあり、値引き合戦が続く。その安い局面を、アベルはむしろ買い場と見た。
グレッグ・アベルは2026年1月1日、ウォーレン・バフェットの後を継いでバークシャー・ハサウェイのCEOに就いた。60年間トップを務めた伝説の投資家の後任という、米企業史でも屈指の重責である。その最初の大勝負が、5月31日に発表したテイラーモリソンの買収だった。
米住宅市場は2020年夏から2022年夏の「パンデミック住宅ブーム」の熱狂が冷め、とくにサンベルト地域では循環的な調整が続く。住宅ローン金利は高止まりし、需要は減退。大手各社は利幅を削り、購入者向けの優遇やローン金利の肩代わり、値引きで販売数をなんとか支えている。多くの投資家が敬遠するこの局面を、アベルは好機ととらえた。
しかも賭けは今回だけではない。7月2日にはクレイトン傘下のマンゴー・ホームズがサウスカロライナの工務店を買収した。さらにバークシャーは同業大手レナーのA種株を3割増やして1,310万株(約12億ドル相当)とし、D.R.ホートンにも新規に手を伸ばした。住宅への傾斜は、もはや明らかだ。
「初デートから祭壇へ」、2か月で決まった異例の速さ
両社トップが本格的に会ってから契約まで、わずか約2か月しかかからなかった。テイラーモリソンのマーケティング責任者は、これを「初デートから祭壇へ直行した」と表現する。
対照的な例がある。日本の住友林業が2026年2月にトライポイント・ホームズを45億ドルで買収したときは、2年以上の交渉を経ていた。テイラーモリソンのケースはまるで違った。「グレッグ(アベル)とシェリル(パーマーCEO)は初日から意気投合した」と、CMOのステファニー・マッカーティは『ResiClub(レジクラブ)』の取材に語っている。
6月末に公開された委任状(株主向けの説明資料)の記録をたどると、その速さがよくわかる。2025年11月、ある企業が1株71ドルでの買収を持ちかけたが、12月に取締役会が拒否した。翌2026年2〜3月には5社が検討したものの、「市場の不確実性」「規模の大きさ」などを理由に、すべて見送った。流れが変わったのは3月27日。ゴールドマン・サックスがアベルとの面会を仲介したのだ。
5月6日、アベルはアリゾナ州スコッツデールにあるパーマーCEOの自宅を訪ね、6時間も話し込んだ。提示額は52週高値と同じ1株72.50ドル。5月18日に再訪し、5月30日に書面で正式提示、翌31日に合意・発表という運びになった。最初の本格的な会合から2か月足らずのスピード決着だった。
買収した工務店ブランドをどう束ねるのか
クレイトンの製造・モジュール住宅事業はそのまま残し、現場建築型の工務店群をテイラーモリソンの下に集約する。地域ブランドを残すかどうかは、1社ずつ精査している最中だという。
バークシャーの狙いは、製造住宅と伝統的な現場建築を切り分け、それぞれの専門性をそろえることにある。温度管理された倉庫で組み立てる製造住宅と、土地を取得し許認可を得て開発する現場建築とでは、必要な技能がまるで違う。クレイトンが2015年のアトランタの工務店買収を皮切りに10年かけて集めてきた現場建築ブランド群は、テイラーモリソンの傘下に「ロールアップ」(買収を重ねて一つに束ねる手法)されることになる。
残る問いは、各地の工務店ブランドを消してテイラーモリソンに一本化するのか、それとも残すのか。マッカーティは「まだ答えは出ていない」と慎重だ。各ブランドの認知度や好感度を調査し、地域に根づいた「資産価値」がどこにあるかを見極めている段階だという。「急いで決めるつもりはない。ブランドごとに見ている」と彼女は言う。
冷え込みの底で買う、という古典的な賭け
バフェットが好んだ「他人が怖がるときに買う」という発想を、後継者は住宅で試そうとしている。
需要が細り、各社が利幅を削るこの局面は、裏を返せば優良な資産を割安に手に入れられる時でもある。テイラーモリソンは2025年に12,997戸の現場建築住宅を建て、クレイトン系も9,953戸を供給した。この巨大な建設プラットフォームを、アベルは市場の底で組み上げようとしている。「初デートから祭壇へ」と評された電撃結婚が、住宅サイクルの底での仕込みとして実るのか。バフェットの流儀を受け継いだ後継者の最初の答え合わせは、これから数年かけて明らかになっていくのかもしれない。





