1917年生まれの2人は、23歳だった第二次世界大戦のさなかに出会い、86年にわたって友情を育んできた。ドロシー・ボゲスは109歳のいまも、毎朝キッチンで音楽に合わせて体を動かす。
109歳が毎朝キッチンで踊る、その一日の始め方
ドロシー・ボゲスの一日は、キッチンでの運動から始まる。古いラジカセで「チャチャスライド」(かけ声に合わせてみんなで同じ振り付けを踊る、定番のパーティー曲)をかけ、カウンターに手を添えて、片脚ずつ前後に振るのだという。
曲が「どこまで低くいけるか(how low can you go)」と問いかけると、彼女は膝を曲げ、腰を落とし、体を揺らして笑う。棚には「109 and fabulous(109歳、そして素敵)」と書かれたマグカップが置かれている。派手なサプリでも、特別な食事療法でもない。ワシントン・ポストが伝えたのは、100歳を超えてなお続く、ごくありふれた毎朝の習慣だった。
体を動かすことが健康寿命を延ばすという知見は、いまや珍しくない。それでも109歳が自らラジカセの再生ボタンを押し、笑いながら腰を落とす姿には、統計の数字にはない説得力がある。
23歳、戦時下で芽生えた86年の友情
ベルマ・ロングとドロシー・ボゲスが出会ったのは、2人が23歳のとき。第二次世界大戦のただ中だった。
ともに1917年に生まれ、若い日に友情を結び、そのまま86年を並んで生きてきた。世界は戦争を経て何度も姿を変えたが、2人の関係は途切れなかった。100歳を超えて残る友人が、しかも同い年で、若い頃からの付き合いだというのは、それ自体が途方もなく稀なことだ。
長寿の物語は、しばしば「本人が何を食べたか」「どんな運動をしたか」という個人の努力に焦点が当たる。だが2人の場合、語りの中心には常にもう一人がいる。長く生きた結果として友情が残ったのか、友情があったから長く生きられたのか。順序を決めつけることは、たぶんできない。
「109歳 長寿の秘訣」に共通して見えるもの
2人に共通するのは、体を動かし続ける習慣と、途切れなかった人とのつながりだ。派手な理論ではなく、この2つが並んで見えてくる。
近年の長寿研究は、筋力を保つことや、社会的なつながりを持ち続けることが、長く健康に生きることと結びつくと繰り返し指摘してきた。孤立は健康を蝕み、動かない体は衰える。ロングとボゲスの日々は、そうした研究が言葉にしてきたものを、飾らない形でなぞっているようにも見える。
もっとも、素材から確実に言えるのは、ボゲスが毎朝踊ること、そして2人が86年来の友であることまでだ。そこに万人向けの「正解」を読み込みすぎるのは慎みたい。それでも、動くことと、隣に誰かがいること。この2つが100歳の壁を越えてなお続いている事実は、静かに何かを語りかけてくる。
長く生きるより、長く動き、長くつながる
2人にとって長寿は、達成すべき目標だったわけではないだろう。毎朝もう一度体を動かし、同じ時代を生きた友がまだそこにいる。その積み重ねの先に、たまたま109歳という数字があった、というほうが近いのかもしれない。
86年前に始まった友情と、キッチンに響くチャチャスライド。長生きの秘訣は特別な何かではなく、今日また体を起こして踊り、隣に誰かがいることの繰り返しなのかもしれない。





