2026/07/04
SPARKL

中国EVの海外工場、その実態は掛け声倒れ。10年で実現した投資は公約のわずか2割

中国EVの海外工場、その実態は掛け声倒れ。10年で実現した投資は公約のわずか2割

「輸出大国」なのに、工場そのものは動かさない

中国のEV大手は海外に工場を建てると繰り返し宣言してきたが、実際に動いた資金はごくわずかだ。完成車を船で送るほうが、はるかに速くて安いからだ。

過去10年で中国クリーンテック分野の海外直接投資は、公約ベースで約4,000億ドルに膨らんだ。だが実際に稼働にこぎ着けたのは、その2割ほどの850億ドルにとどまる。

2020年から2024年にかけて、世界最大のEVメーカーとなったBYD(ビーワイディー)と、車載電池で世界首位のCATL(キャットエル)は、そろって「グローバル展開」を高らかに語っていた。ところがいざ資金を投じる段になると、両社は国内で造り、完成車と電池を海外へ送る道を選んできた。ニューヨークの独立系調査会社ロジウム・グループのデータを紹介したテックメディア『Rest of World』の報道によれば、EVと電池製造への「実際に完了した」海外投資は、輸出額のごく一部にすぎない。

理由ははっきりしている。米国は中国製EVに100%の関税をかけ、車載ソフトウェアの搭載も禁じた。工場を一つ建てるのは途方もない大仕事だが、輸出なら明日にでも港から送り出せる。世界の多くの地域で安価な中国車のおかげでEV価格が下がる一方、米国のEV平均価格は中国の倍を超える。カナダやEUが強硬な輸入関税の姿勢を和らげたのも、中国が完成車と電池の両方で世界最大の生産国だからだ。

実態は「掛け声倒れ」、数字が乖離を裏づける

公約と現実の差は、集計方法を変えると一気に露わになる。中国企業が「投じた」と称する民間資本は約4,000億ドル。だが検証可能な数字だけを数えると、その半分にまで縮む。

ロジウム・グループが署名済みの覚書や法的拘束力のある契約だけを数え直し、出資比率で按分すると、コロナ後の投資額は約2,000億ドルに半減する。そして実際に稼働にたどり着いたのは、この10年でわずか850億ドルだった。「言葉のわりに、行動が伴っていない」というのが、EV・風力・太陽光を含む中国クリーンテック投資の実像だ。

投資「発表」の額は2022年から2023年にかけて年平均330億ドルまで急増したが、それでも中国のEV・電池勢は現地生産よりも輸出に大きく依存していた。そしてこの2年間、米国とEUが相次いで制限的な関税を課すと、発表額そのものが急落した。ロジウム・グループの上級リサーチアナリスト、アルマン・メイヤーは、クリーンテック市場の想定より遅い成長、続く関税の不確実性、政策支援の縮小、そして戦略分野への中国投資に対する米議会の圧力が重なったと指摘する。

西側の工場計画は、次々に止まっている

関税に加えて環境・労働問題への監視が強まり、中国勢が西側で進めていた計画は遅延と停止が相次いでいる。すでに動き出したはずの工場さえ、稼働は思うように進んでいない。

象徴的なのがBYDの動きだ。タイの工場は稼働にこぎ着けたものの、ハンガリーとブラジルの工場は遅れ、トルコの工場は無期限で停止している。米国市場からは中国企業がはっきりと関心を失いつつあり、EV分野で発表された投資の実に6割がすでに撤回された。西側との対立が続くほど、中国メーカーは「造らない」判断へと傾いていく。

次の主戦場は、アフリカとアジアに移る

西側が門戸を狭めるなか、中国のEV投資マネーは行き先を変えつつある。より友好的なアフリカとアジアの市場が、欧州を抜いて中国のEV関連投資の主要な受け皿に浮上した。

ロジウム・グループの報告書は、完了ベースの投資が世界全体では緩やかに増え続けていると記す。「現地生産が、市場参入の条件としてますます重要になっている」からだ。関税で締め出そうとすればするほど、中国メーカーは工場を「建てざるを得ない」場所を選び直す。その照準が国内の港ではなく、遠い大陸の建設現場に定まる日は、そう遠くないのかもしれない。