先月時点で地球を周回するスターリンクの衛星は約10,400基。2022年以前に人類が打ち上げた衛星の総数14,450基に、わずか数年で並ぶ勢いだ。
スターリンクはなぜ天文台の観測を妨害するのか
太陽光を反射した衛星が、望遠鏡の露光中に視野を横切り、明るい光の筋を残すからだ。地上から宇宙を観測する装置にとって、その一筋が背後の銀河を丸ごと消してしまう。
スターリンクは、イーロン・マスクが率いるスペースXの子会社が展開する高速インターネット事業だ。従来の回線が届きにくい世界中の地域にネットを供給する狙いで、地球を覆うように衛星を打ち上げてきた。あまりに密で目立つことから、しばしば人工の「メガコンステレーション(巨大衛星群)」と呼ばれる。
問題は、この衛星が夜空で予測できない形で光を散らす点にある。世界最強級の望遠鏡を運用する政府間機関、欧州南天天文台(ESO)で観測運用を統括するオリヴィエ・アイノーは「これまでは何とか対応してきた。だが状況は悪化している」とプレスリリースで述べている。「太陽に照らされた衛星は、遠くの銀河よりはるかに明るい。観測範囲を横切れば画像に光の筋を刻み、その背後にあるものを消し去る」。
数字も、その深刻さを裏づける。チリのパラナル天文台にある超大型望遠鏡VLTでは、衛星を肉眼で見えない暗さに保ったとしても、視野が28%損なわれると試算された。少しでも明るく光れば、被害はさらに広がる。チリのベラ・C・ルービン天文台の広視野望遠鏡では、毎晩数時間にわたり撮影画像の大半が使い物にならなくなる恐れがあるという。
100万基の「軌道データセンター」構想が望遠鏡に落とす影
マスクが掲げる100万基規模の「軌道データセンター」網について、ESOは天文学に「壊滅的な影響」を及ぼしかねないと警告する。太陽光で途切れなく発電し、無限の計算能力をまかなうという構想だ。
衛星がもたらす光害には、二つの経路がある。ESOの新たな報告書によれば、暗すぎて直接は見えない衛星も「拡散光」となって夜空をぼんやり明るくし、より明るい衛星の光は大気を通る際に「散乱」してあらゆる方向へ飛ぶ。どちらも、かすかな天体を追う研究者にとって大きな障害になる。
衛星の数は、マスクが2019年に低軌道へ衛星を放ち始めて以来、急増してきた。先月時点でスターリンクの衛星は約10,400基。2022年以前に人類が打ち上げた衛星の総数は14,450基だったから、わずか数年でその歴史全体に迫った計算になる。マスクは軌道データセンター構想を発表したブログで「宇宙ではいつも晴れている」と、計算資源の無限の可能性を歓迎してみせた。
「宇宙は広い」マスクの楽観と、研究者たちの反論
マスクは「宇宙は本当に広く、混雑することはない」と楽観するが、欧州の天文学者たちはこれを真っ向から否定する。
「あそこには広大な空間がある。数千基、いや100万基まで話が及んでも、動き回る余裕は十分にある」。マスクは6月に投稿した動画でそう語り、「宇宙はとても広いから、混雑することはない」と続けた。環境や科学からの懸念が、この経営者の歩みを緩めた様子は今のところない。
ESOの見方は違う。低軌道に100万基のデータセンター衛星が漂えば、天文学という分野に「劇的な影響」が及ぶと報告書は指摘する。同機関はさらに、発電用の巨大な鏡を宇宙に打ち上げようとする航空宇宙企業リフレクト・オービタルの計画にも懸念を示した。頭上の空をめぐる利害が、企業と科学者の間で静かにせめぎ合う。
夜空という「共有資源」をどう守るか
ESOは、肉眼で見えない暗い衛星を10万基までに制限する上限を提案している。被害を完全には防げなくても、抑える余地はまだ残されている。
この10万基という数字は、研究者がシミュレーションを重ねて導き出したものだ。予想されるスターリンク衛星の洪水が世界最強の望遠鏡群をどれだけ乱すかを計算した結果、決して楽観できる値ではなかった。一方でスペースXは、太陽電池パネルや機体に光が反射して生じる光害を抑えるため、衛星をより暗くする改良を進めているとしている。
「低軌道は、現代生活に計り知れない価値をもたらす天の渚だ」とアイノーは言う。世界をつなぐ通信から、宇宙への澄んだ視界まで。「ただし、光害から大気圏再突入の影響まで、巨大衛星群が残す足跡を管理しなければならない。この資源を、未来の世代にも手つかずのまま残すために」。星を映すはずの巨大望遠鏡と、その視野を横切る光の帯。天の渚と呼ばれる低軌道を次の世代へ澄んだまま手渡せるかどうかは、まだ決まっていない。





