B2Bマーケティング責任者の85%が「投資対効果(ROI)の証明こそ自分たちの仕事だ」と答えた。一方で48%は、どの施策が購買を動かしたのかを今も推測で判断している。
なぜマーケティングは「コスト部門」から外れたのか
評価軸が「作ったもの」から「生んだ成長」へ移ったからだ。閲覧数やクリックの多さではなく、売上への貢献で測られるようになった。
長いあいだ、マーケティングは会計帳簿の「経費」の側に置かれてきた。会社の認知を広げ、見栄えを良くする部門。予算は「あれば嬉しいが、不況になれば真っ先に削られ、守るのが難しいもの」として扱われてきた。だが、その時代は終わりつつある。マーケティング企業マディソン・ロジックが調査会社ハリス・インタラクティブと実施した調査では、B2Bの上級マーケティング責任者の85%が「素晴らしいクリエイティブや再生回数を生むことではなく、ROIを証明することが仕事だ」と考えていた。
この変化は、米ビジネス誌『ファスト・カンパニー』に寄稿されたマディソン・ロジックCEOの論考が指摘する通り、営業やKPIとの距離を一気に縮めている。かつて営業が「案件の予測とパイプライン管理」を必須スキルにしたように、製品開発が「ロードマップを売上目標に直結」させたように、マーケティングもいま同じ通過儀礼のただ中にいる。
昇進するCMO、それでも半数が「勘」で動く
その変化は組織図の頂点に表れている。経営幹部の人材紹介大手スペンサー・スチュアートの2026年の調査によると、退任するCMO(最高マーケティング責任者)の62%が「外へ」ではなく「上へ」動き、9%はCEOの椅子に座ったという。
さらに前年の同社調査では、フォーチュン500企業の現役CEOの37%がマーケティング経験を持っていた。顧客の行動や需要を肌で理解している人材が、いまや「経営そのものを担える人」と読み替えられている。専門職として距離を置かれていた頃とは、扱いが逆転した。
ただし、この好機には落とし穴がある。責任者の48%が「どのマーケティング施策が購買判断を動かしたか」を推測で答えている、と調査は明かす。責任だけが先に手渡され、それに応える証拠づくりが追いついていない。とりわけSNS・ディスプレイ広告・音声といった、パイプライン作りで最も頼られるチャネルほど、成果の紐づけが曖昧なままだという。
「一人のリード」ではなく「買う集団」を見る
B2Bの購買は、もはや一人の担当者では動かない。社内外の複数の意思決定者が、それぞれ別のコンテンツを別のタイミングで読みながら、一つの案件を前に進めている。
問題は、多くの測定の仕組みが「個人のリード」を追うように作られている点にある。ダッシュボードは「誰かが資料をダウンロードした」ことは教えてくれる。だが同じ週に、財務担当役員が導入事例を読み、IT部門の責任者がウェビナーに参加し、調達担当がリターゲティング広告をクリックしていた。その全部が一つの案件の前進を示していることは、映してくれない。
調査した責任者の84%が「チャネルをまたいだ可視化」を2027年の最優先課題に挙げた。個々のリードではなく購買グループ全体を読む力が、成長の意思決定の場に誰が呼ばれるかを決めつつある。
勝ち残る条件は、派手さより「証拠」
残る課題ははっきりしている。証拠を出せるチャネルへ、周りがまだ勘で動いている今のうちに投資を組み替えることだ。
やることは複雑ではない。第一に、使い慣れているか・報告しやすいかではなく、実際にパイプラインに効いているかでチャネルへの投資を見直す。第二に、リーチや反応数だけを狙うのではなく、「どの企業の誰が、案件のどの段階で動いているか」が見えるチャネルへ予算を寄せる。第三に、個々のリードではなく購買グループを丸ごと捉える仕組みを持つ。認知を広げるブランディングを捨てる話ではない。証明が求められる領域に、努力を配分し直すということだ。
プレッシャーは小さくない。責任者の90%が「事業への貢献を示せないチームは、今後予算を守れなくなる」と答えている。だが裏を返せば、応えられると信じられているからこそ、売上の責任を任されている。数十年かけて「会議室の席」を勝ち取ってきた部門に、いまは経営そのものの鍵が渡されようとしている。その真ん中で勘に頼っている48%は、まだ決着していない変化の早い段階に立っているだけだ。動く余地は、十分に残されている。





