2026年W杯で、テレムンドのスペイン語中継は1試合平均460万人を集めた。米国の視聴者のほぼ半数がスペイン語で観戦し、そのうち2割は英語を母語とする人々だった。
なぜテレムンドのW杯中継はこれほど人気なのか
派手な実況と、CMを挟まない中継が理由だ。言葉が半分わからなくても、歓声とドラマはそのまま伝わる。
米FOXスポーツは今夏のW杯を英語で中継し、グループステージ72試合で1試合平均500万人を集めた。一方、NBCユニバーサル傘下のテレムンドがスペイン語で流す中継は、動画配信のPeacock(ピーコック)と合わせて1試合平均460万人に達した。NPRの報道によれば、米国のW杯視聴者のほぼ半分が、スペイン語のほうを選んでいる計算になる。
奇妙なのは、その内訳だ。テレムンドのスポーツ部門を統括する上級副社長ミゲル・ロレンソによると、米国の人口に占めるヒスパニックの割合は2割にすぎない。にもかかわらず、国民の半分近くがスペイン語で観戦している。視聴率調査会社ニールセンの調査では、テレムンドのW杯視聴者の2割は英語を母語とする層だという。
数字も、この熱を裏づける。テレムンドのW杯視聴は2022年大会から122%増えた。SNS上の再生回数は10億回を突破している。「この国でスペイン語放送された歴代W杯で、最も観られている大会だ。数字は本当に信じがたい」と、ロレンソは語る。
「ゴーーーール」、意味ではなく熱で伝わる実況
テレムンドの実況は、言葉の意味より熱量で観客をつかむ。名物アナウンサーの長い雄叫びが、その象徴だ。
その熱を体現するのが、テレムンドの名物実況アナウンサー、アンドレス・カンターだ。得点が決まるたびに、彼は息の続く限り「ゴーーーーーール」と叫び続ける。この雄叫びは、スペイン語がわからない人の耳にも一発で届く。
カリフォルニア州カルバーシティのカフェで、メキシコ生まれのヒセル・ロサスと母グラシエラ・レイエスは、米国代表の勝利をカンターの実況とともに祝った。母レイエスは、カンターの長い「ゴール」コールを真似てみせた。「みんなにとって、あそこが一番いいところなの」
娘のロサスは、スペイン語で観るほうが断然おもしろいと言い切る。「100万パーセントね。あの興奮、あの感情、あの空気。英語とは昼と夜くらい違う」。移民のおかげで米国でもサッカー人気が高まっている、と彼女は付け加えた。
こうした声は、英語話者のあいだにも広がりつつある。「『スペイン語は一言もわからないけど、テレムンドで観たい。そのほうが盛り上がって聞こえるから。大会が終わるころにはスペイン語を覚えているかも』。そんなコメントを数えきれないほど見た」とロレンソは言う。「喜びも興奮もドラマも、言語を問わない。世界共通なんだ」
CMを挟まず、カメラは選手を映し続ける
FOXが給水タイムにCMを流す一方で、テレムンドはカメラを選手に向けたままにする。中継の「間」がまるで違う。
実況の熱だけではない。テレムンドが支持されるもう一つの理由が、中継の作り方にある。選手が水分補給のために試合を止める給水タイムに、FOXがCMを流すのに対し、テレムンドはカメラをピッチに残す。
この差を高く評価するのが、コメディアンのトレバー・ノアだ。彼は自身のYouTubeチャンネルでW杯の観戦パーティーを開いている。「選手たちがピッチ上で何が起きているか話しているのが見える。どちらの監督がより緊張しているかも見える。これも試合の一部なんだ」とノアは語った。「CMに切り替えた瞬間、緊張も、喜びも、期待感も失われる。だからテレムンド、本当に素晴らしい中継だ」
わずか数分の給水タイム。そこにCMを差し込むか、選手の表情を映し続けるか。その小さな選択が、観る側の没入感を大きく左右している。
言語より、熱が伝わっていく
スポーツの興奮は、言葉の壁を軽々と越えていく。テレムンドの躍進は、その何よりの証拠だ。
「喜びも興奮もドラマも、言語を問わない。世界共通なんだ」というロレンソの言葉は、この現象の核心を突いている。W杯という舞台では、正確な実況の言葉より、その場の熱量のほうが速く、深く伝わるらしい。
北米で開かれる2026年大会は、まだ続いている。メキシコと米国の勝利で盛り上がりは頂点に達し、テレムンドのSNSは記録を更新し続けている。英語話者がスペイン語の中継に引き寄せられる流れは、大会が進むほど加速していくのかもしれない。
言葉が半分しかわからなくても、カンターの雄叫びと、ピッチに残り続けるカメラがあれば、歓声は国境も言語も軽々と越えていく。





