2026/08/06
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UNAMがAI試験監督を初導入。16万人受験の入試で7.5万人に不正の疑い

UNAMがAI試験監督を初導入。16万人受験の入試で7.5万人に不正の疑い

メキシコ国立自治大学(UNAM)の入試を分析した専門家は、約16万人の受験者のうち半数近い7.5万人が不正をした可能性があると推定した。AI試験監督を導入した初年、110点以上の高得点者の割合は例年の0.9%から5.5%へと5倍以上に跳ね上がった。

なぜメキシコ最大の大学でAI入試監督が破綻したのか

UNAMが入試を初めてオンライン化し、受験者をウェブカメラで監視するAIに不正の摘発を任せた結果だ。ところが専門家の推定では、半数近い受験者がこの監視の目をすり抜けたとみられる。

メキシコ国立自治大学(UNAM)は、メキシコ最大の学生数を抱えるラテンアメリカ有数の名門校である。毎年およそ5万人が入学するが、その半数以上は付属の14校の高校からの内部進学者だ。外部からの受験者に開かれた枠は約2万2,000。今年はそこに16万人近くが殺到した。

狭き門を勝ち抜くための入試は、これまで会場で人間の試験官が立ち会う形で行われてきた。今年、UNAMはアクセスを広げる目的でこれをオンラインに移し、2つのソフトウェアで公正さを担保しようとした。ひとつは受験中に他のタブやアプリを開けなくする専用ブラウザ「LockDown(ロックダウン)」。もうひとつが、テリトリウム(Territorium)という企業が開発したAIプロクターだった。プロクターとは試験を遠隔で監視する仕組みで、このAIはウェブカメラ越しに受験者を見張り、不正の兆候を検知する役割を担っていた。

高得点者が5倍、数字が異常を告発した

不正発覚のきっかけは、告発でも内部通報でもなく、統計そのものだった。過去5年間、110点以上を取った受験者はわずか0.9%にすぎない。それが今年は5.5%へと跳ね上がり、あまりに不自然なこの急増に、受験生も外部の専門家もそろって異議を唱えた。

数字を精査したのは、AI研究者で数学者のラウル・ロハスだ。ニューヨーク・タイムズによれば、ロハスは結果を分析したうえで、受験者の約半数にあたる7万5,000人ほどが不正をした可能性があると推定している。手口として彼が挙げたのは、目新しいハッキングではなく、昔ながらの「カンニングペーパー」だった。

最先端のAIが見張る試験を出し抜いたのが、紙とペンに象徴されるアナログな知恵だったという事実は、皮肉としか言いようがない。監視の技術がどれほど高度になっても、人間はその一歩外側で抜け道を探す。

カメラの死角で、AIプロクターは何を見逃したのか

AIが警戒していたのは、映り込むヘッドフォンやオフにされたマイクといった限られた兆候だけで、カメラの画角の外側は事実上の無防備地帯だった。しかも受験前から、SNSにはその死角を突く具体的な手口が出回っていた。

拡散していた方法は主に2つ。ひとつは、ウェブカメラに映らない位置に2台目のモニターを置き、そこに問題文を映してAIアシスタントに答えを尋ねるやり方。もうひとつは、長い髪の下にヘッドフォンを隠して音声で答えを聞く、というものだった。人間の試験官なら教室を歩き回って気づいたかもしれない挙動も、固定されたカメラ1台には届かない。

AIを開発したテリトリウムは、複数のメディアからの取材要請に応じていない。「アクセスを広げる」という善意から出発したオンライン化が、なぜ過去最大級の不正の温床になったのか。その説明責任は、大学とベンダーの双方に残されたままだ。

5万8,000人の再試験が突きつける、監視AIの現在地

UNAMは自ら結果を精査するため専門委員会を立ち上げ、今週、ひとつの結論を出した。オンライン試験で合格した受験生と、その得点なら過去5年間なら合格していたはずの受験生をあわせた5万8,000人に、もう一度「対照試験」を課すという勧告だ。今度は、対面で。

つまり、アクセス拡大のためにオンライン化した試験が、結局は会場での再試験へと逆戻りした。教育のデジタル化は不可逆の流れに見えるが、公正さの担保という一点において、技術はまだ人間の目を完全には置き換えられていない。世界中の大学や資格試験がリモート監視AIの導入を進めるいま、UNAMの一件は先行事例として重い問いを投げかける。

カメラ越しの人工知能ではなく、教室に戻った受験生の手元を人の目が見守るとき、UNAMが失った「誠実さ」は取り戻せるのかもしれない。