2026/06/19
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創造的アイデアを成長に変えられる企業は16%。アクセンチュアが説く『応用クリエイティビティ』とは

創造的アイデアを成長に変えられる企業は16%。アクセンチュアが説く『応用クリエイティビティ』とは

アクセンチュアの調査では、経営幹部の81%が「自社は創造的なアイデアを生み出せる」と答えた。だが、それを頻繁に成長施策へ転換できているのは16%にとどまる。しかもその16%は、売上成長で同業を53%上回る確率が高かった。

「応用クリエイティビティ」とは何か

「応用クリエイティビティ」とは、創造性を一握りの才能の主観ではなく、訓練と経験で磨かれる組織のスキルとして扱い、アイデアを実際の成果へ変える仕組みを指す。アクセンチュア傘下のクリエイティブ集団アクセンチュア・ソングが、新しい調査報告で打ち出した概念だ。

報告書の名は「Applied creativity—and how to lead it(応用クリエイティビティ、その導き方)」。14カ国1,725人の経営幹部への定量調査と、イケア、レゴ、米EVメーカーのリビアンといった企業の幹部15人への長時間インタビューにもとづいている。狙いは明快だ。なぜ一部の企業だけが創造的なアイデアを成長に転換できるのか、その仕組みを解き明かすことにある。

同社のクリエイティブ戦略責任者ニック・ローによれば、この概念は2000年代に一世を風靡した「デザイン思考」の後継を狙う。デザイン思考はコンサル会社IDEO(アイデオ)が広め、「誰もがデザイナーのように考えられる」と謳って大企業に浸透した。だが米ビジネス誌『Fast Company』の調査報道によれば、その言葉はすでに退場しつつあり、求人票からも消えはじめている。

ローは、デザイン思考には致命的な欠陥があったと指摘する。創造性を「誰でも持てる主観的な資質」とみなし、それが訓練と才能を要するスキルだと認めなかった点だ。「大規模言語モデルの記事を数本読んだだけで、自分でモデルを作れるとは誰も思わない。なのに、広告を見たり製品を使ったりしただけで、自分も物語を語りデザインを作れると思い込む人は多い」とローは語る。

創造性を罰する組織

多くの企業は創造性の重要性を理解しながら、創造的なアイデアそのものを「リスク」として扱っている。これがアクセンチュア・ソングの言う「創造性のペナルティ」だ。

数字も、この矛盾を裏づける。調査では幹部の83%が「創造性は今後の成功に不可欠だ」と答えた。同じ割合が「創造性は今後最も重要なリーダーシップ能力の一つになる」と認めている。ところが63%は「創造的なアプローチが原因で評価を下げられた同僚を知っている」と回答し、57%は自分自身がそうだったと打ち明けた。さらに59%が「現状に異を唱える人間は『扱いにくい』とみなされる」と答えている。

アクセンチュア・ソングのCEOンディディ・オテは、問題の所在をこう見る。「多くのCEOが苦しむのは、創造性の問題ではなく応用の問題だ」。アイデアを生む力ではなく、それを実装する土台が欠けているという指摘である。

16%の企業がもつ3つの柱

成果を出す企業に共通するのは、専門性・コミットメント・構造という3つの柱だという。アクセンチュア・ソングはこれを、業種を問わず使える「設計図」として公開した。

第1の柱は専門性。経営層そのものを、クリエイティブの実践者で固めることを意味する。だが現実は遠い。ホスピタリティ、家電、アパレルの大手5社の取締役163人を分析したところ、クリエイティブ畑の出身者はわずか9%だった。スティーブ・ジョブズ、オプラ・ウィンフリー、ナイキ創業者フィル・ナイト。史上まれな成功者の多くは創造の世界から来た。それでも企業は、技術畑や運営畑からリーダーを引き上げがちだ。

第2の柱はコミットメント。創造性を阻む壁を、リーダー自らが取り除く姿勢を指す。デイビッド・ドロガがアクセンチュア・ソングのCEOだった頃、社員の誰もが彼を含む経営幹部と1対1の面談を予約し、温めているアイデアを売り込める仕組みを設けた。

第3の柱は構造。レゴは研究成果を物理的な「遊びの試作品」に変え、役員室で経営陣自らが手に取り、自社らしさに合うかを判断する。イケアはAIによるシミュレーションでアイデアを端から端まで検証し、英銀HSBCは段階的な資金供給と専用の実験時間を組み合わせて、創造的なアイデアがコンプライアンスの圧力に潰されないようにしている。

創造性は「あれば良い」では終わらない

3本の柱がそろった企業ほど、AI時代への備えが厚い。

数字もそれを物語る。3つの柱がすべて整った企業は、「創造的リーダーシップへの投資はAI時代に成果を生む」と強く同意する割合が37%高かった。そして成長への転換に長けた例の16%は、売上成長で同業を53%、従業員エンゲージメントで54%、ブランド価値で58%上回る確率が高い。

元CEOで現副会長のデイビッド・ドロガは、この報告書を出発点と位置づける。AIが効率と速度をもたらすほど、それは誰もが手にする「最低条件」になる。差を生むのは、線形でも論理的でもない先を見通し、ものごとを読み替えられる創造的な人材だという。

「私の夢は、誰を採用し、大学で何を教えるか、その力学そのものを変えることだ」とドロガは語る。創造性を「あれば良いもの」ではなく、ビジネスに不可欠な資源として見せること。アクセンチュア・ソングの賭けは、まだ始まったばかりなのかもしれない。