2026/07/23
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51歳男性を襲った全身の灼熱痛、原因不明の末梢神経障害に医師も戸惑った

51歳男性を襲った全身の灼熱痛、原因不明の末梢神経障害に医師も戸惑った

灼熱感は左腕から始まり、わずか1か月で耳から足の先まで全身に広がった。血液検査も内視鏡検査も原因を突き止められず、当時51歳の男性は一日の大半をベッドで過ごすことになった。

「耳から足の先まで、全身が燃えた」

灼熱感は左腕の上部から始まり、わずか1か月で耳から足の先まで全身に広がった。当時51歳だったグレゴリー・マーセンは、痛みのために一日の大半をベッドで過ごすようになった。

横になっても、その熱は引かない。皮膚の内側からじわじわと焼かれるような感覚に、まともに眠ることさえ難しかったという。外から見れば傷ひとつない身体が、本人の中では絶えず燃え続けている。この落差こそが、灼熱性の神経痛に苦しむ人を最も孤立させる部分だ。

痛みには目に見える証拠がない。だからこそ、周囲にも、そして医師にも、その苦しみの深さは伝わりにくかった。

検査を重ねても、原因はわからなかった

血液検査から内視鏡検査まで受けても、どの医師もマーセンの痛みの原因を特定できなかった。ある医師は、その痛みを精神疾患によるものと考えたという。

身体の異常が見つからないとき、痛みは「心の問題」として片づけられやすい。だが後に下された診断は、希少なタイプの末梢神経障害だった。末梢神経障害(ニューロパチー)とは、脳と脊髄から全身へ伸びる末梢神経そのものが傷つき、痛みやしびれ、灼熱感を引き起こす状態を指す。マーセンを苦しめた末梢神経障害性疼痛は、神経が誤った「痛みの信号」を送り続けることで、実際の外傷がなくても激しい痛みを生む。

原因を名指しできる検査がないまま、患者は病院を渡り歩く。この診断までの長い迷路そのものが、ワシントン・ポストが報じた彼の物語の前半を占めている。

医師が出した「ばかげた処方箋」

マーセンを救ったのは、薬でも手術でもなかった。電動自転車(e-bike/イーバイク)にまたがり、アメリカ大陸を横断するという、一見ばかげた提案だった。

全身が燃えるように痛む人間に「自転車で走れ」と言うのは、常識に反して聞こえる。ところがペダルを踏み、風景が後ろへ流れていくあいだ、あの絶え間ない灼熱感がやわらいだ。電動アシストが脚への過度な負担を抑えてくれるため、体力が落ちた身体でも長い距離を進める。神経痛を抱えた人にとって、電動自転車は「運動を続けられる現実的な手段」になり得るのだ。

なぜ動くと痛みが引くのか、そのメカニズムは完全には解明されていない。だが確かなのは、ベッドの上では決して得られなかった時間を、彼が走ることで取り戻したという事実だ。

動くことが、痛みをほどく

慢性的な痛みに対して、体を動かすことの効果が近年あらためて見直されている。安静だけが答えではない、という考え方が広がりつつある。

ワシントン・ポストも、慢性的な痛みと脳の関係や、運動が持続的な痛みをやわらげる可能性について繰り返し取り上げてきた。痛みは単なる身体の損傷の信号ではなく、脳が学習し、増幅し、ときに独り歩きする現象でもある。だとすれば、身体を動かして新しい感覚で神経を「上書き」していくことにも、理にかなった面がある。もちろん、これは万人に効く処方ではなく、専門医の診断と組み合わせて初めて意味を持つ。

それでも、原因不明の激痛に「気のせい」と言われた人が、自分の足で地平線に向かって走り出したという事実は、同じ痛みを抱える誰かの視界を少しだけ明るくする。かつて全身を焼いた痛みを抱えたまま、彼はペダルに足をかけ、アメリカの大地を横切っていく。動き続けることが痛みをなだめるのだとしたら、止まらないことこそが、いちばんの薬なのかもしれない。