2026/06/09
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シカゴ美術館ミニチュアルーム68室を年3回清掃。1室最大3時間、1ミリ筆で守る1930年代の傑作

シカゴ美術館ミニチュアルーム68室を年3回清掃。1室最大3時間、1ミリ筆で守る1930年代の傑作
Photo by Simon Gough on Pexels

シカゴ美術館のソーンルームは68室あり、年2〜3回の清掃が行われる。1室の清掃には1〜3時間かかり、1ミリ幅から約10センチ幅まで多様な筆、へら、ピンセット、エアブロワーを駆使した精密作業だ。

12分の1スケールで封じ込められた時代

1930年代にシカゴの富裕層出身の収集家、ナルシッサ・ニブラック・ソーンが熟練職人チームとともに制作したミニチュア建築群だ。各部屋は靴箱ほどの大きさで、特定の時代・地域のインテリアを12分の1スケールで再現している。

一室ずつ異なる時代の生活が息づく。1930年代ロンドンの居室には、コーヒーテーブルにカクテルセット、ソファに英国の老舗誌「カントリーライフ」、窓際にカードゲームのセットが置かれている。担当学芸員のキット・マクスウェルが「この時代らしさが凝縮されている」と語るように、各部屋は単なる模型ではなく、生活の一瞬を切り取ったスナップショットだ。隣のアートデコ調の食堂まで、細部まで作り込まれた空間が続く。

全68室が現在もシカゴ美術館の常設展示として公開されている。NPR(米国公共ラジオ放送)が報じたように、毎年清掃シーズンになると専門チームが稼働し始める。

ガラス扉を開け、1ミリ筆を握る

専門のアートハンドラー(美術品取り扱いの専門家)、ジョナサン・ウースターは1部屋につき1〜3時間をかけて清掃する。同僚1人と合わせて年間2〜3回、68室すべてを回るこの作業は、単純な掃除とは別物だ。

ウースターが持ち込むのは、プラスチック製カートに積まれた専用ツールの一式だ。幅約10センチから1ミリまで硬さの異なる多数の筆、へら、ピンセット、エアブロワー。まずガラス扉の鍵を開けて前面を持ち上げ、室内の家具を一点ずつ取り出す。数十個のビーズが連なるシャンデリアを天井から外す作業は「実際かなり複雑」と本人も認め、息を止めながらカートに置く瞬間もある。

清掃後、各小物は撮影した参照写真をもとに元の位置へ正確に戻される。「同じ作業の繰り返しになる」とウースターは言うが、それゆえに高い集中力が求められる。「たいていはオーディオブックを聴きながら、必要な瞑想状態に入ります」。来館者の往来で積もるほこりは美観だけでなく保存状態にも影響するため、年2〜3回の清掃サイクルは欠かせない。

年3回、68室が新たな姿を取り戻す

「これは子どもが壊せるようなものではない。インテリアデザインの美的原則を訪問者に教え、視野を広げるためのものだ」。ソーンはドールハウスとの混同を厳しく否定し、作品群を教育的アーカイブとして位置づけた。

旅行家でもあったソーンは各地の住空間を広く観察し、その知見を1:12のスケールに落とし込んだ。今日の博物館が映像や体験型展示で「生活の場面」を再現しようとする流れの、90年前の先駆けとも言える存在だ。担当学芸員のマクスウェルが誇りを持って案内するこの展示室は、時代を超えた空間設計の教科書として今日も機能している。

90年前に「インテリアを教える」と決めた一人の収集家の意志は、ウースターのような職人が筆を握り続ける限り、この68室の中で確かに生き続ける。