2026/07/26
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米ラジオNPRが問う『友情不況』、アプリは200時間の壁を越えられるか

米ラジオNPRが問う『友情不況』、アプリは200時間の壁を越えられるか
Photo by Julio Lopez on Pexels

ある研究では、ただの知り合いが「親友」に変わるまでに、累計でおよそ200時間の共有時間が必要だとされる。友達作りアプリが肩代わりできるのは最初の出会いまでで、その先の時間は自分で積み上げるしかない。

「友情不況」とは何か、いま世界で何が起きているのか

一部の研究者が「友情不況(friendship recession)」と呼ぶのは、大人になるほど親しい友人を保ちにくくなる状態を指す。米公共ラジオNPRによれば、この渇きを埋めようと、人と人をつなぐアプリやサービスが次々に登場している。

学校や職場という「勝手に人が集まる場所」を離れると、友情は急に難しくなる。恋人探しにはマッチングアプリという定番があるのに、友達探しには長らく決まった入口がなかった。そこに目をつけたサービスが、共通の趣味や住む場所を手がかりに、見知らぬ同士を引き合わせ始めている。

NPRが利用者に取材した記事では、こうしたアプリを実際に使った人たちの本音が語られている。そこに一つの正解はない。うまく友情へ発展した人もいれば、気まずさだけが残った人もいた。

アプリは友達を「出会わせる」ところまで、それ以上は運べない

アプリが得意なのは条件の合う相手を引き合わせるところまでで、そこから友情に育てる時間までは肩代わりできない。NPRが集めた声も、成功と失敗にくっきり割れている。

友情の「時間コスト」を示す有名な研究がある。カンザス大学のジェフリー・ホール教授(コミュニケーション学)の調査によれば、知り合いがただの友人になるまでに約90時間、さらに親友と呼べる関係になるまでには200時間を超える時間を一緒に過ごす必要があるという。アプリが縮められるのは、この長い道のりの入口部分だけだ。

だからこそ、体験は人によって大きく振れる。一度会って連絡が途切れれば、それは200時間の手前で止まった関係になる。逆に、アプリで出会った相手と何度も会う習慣ができれば、アルゴリズムはきっかけとして十分に機能したことになる。道具が悪いのではなく、その先を歩けるかどうかが分かれ目なのだ。

それでも、最初の一歩を軽くする道具として

アプリの本当の価値は、親友を自動で届けることではなく、「誘う」という最も重い一歩を軽くするところにある。

大人が友達を作れない最大の理由は、時間のなさよりも「今さら声をかけていいのか」という気後れであることが多い。相手も友達を探していると分かっている場所でなら、その気後れは小さくなる。アプリは魔法の杖ではないが、最初のドアを開けやすくする蝶番にはなれる。

友情不況と呼ばれる時代に、アプリが差し出せるのは最初の一歩だ。その先の200時間を誰と重ねていくのかは、画面を閉じた後の私たちに残されているのかもしれない。