2026/08/26
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ドリー・パートン80歳で死去。子どもに3億冊を贈った識字事業を遺す

ドリー・パートン80歳で死去。子どもに3億冊を贈った識字事業を遺す

ドリー・パートンが1995年に始めた識字プログラムは、これまでに世界で3億冊を超える本を5歳未満の子どもに無償で届けてきた。現在も毎月340万冊が配られている。

カントリーの女王は「本を贈る人」でもあった

ドリー・パートンは歌手・俳優・実業家として成功する一方、私財を投じて識字支援・奨学金・医療研究・災害支援に取り組んだ慈善家でもあった。その中核が、5歳未満の子どもに毎月無料で本を郵送する「イマジネーション・ライブラリー」だ。

カントリー界で「女王」と呼ばれた彼女の訃報は、まず往年の名曲とともに語られた。だが本人が生涯で最も力を注いだのは、ステージではなく子どもの本棚だったのかもしれない。1995年に故郷テネシー州セビア郡で始まったこの取り組みは、地域の小さな試みから国境を越える運動へと育った。米ビジネス誌『ファストカンパニー』の報道によれば、プログラムは昨年30周年を迎え、米国では5歳未満の子どもの6人に1人が本を受け取っているという。

中退率35%を6%に下げた「500ドルの約束」

パートンの慈善は感傷ではなく、数字で結果を出す設計だった。1988年、彼女は故郷の高校中退率を下げるためドリーウッド財団を設立し、中学生に「高校を卒業したら500ドル」と約束した。

この「バディ・プログラム」では、生徒を二人一組にし、互いに卒業させ合うと誓わせた。一人で頑張らせるのではなく、隣に伴走者を置く。財団によれば、対象学年の中退率は35%から6%へと激減した。ばらまきではなく、人と人を結び直す仕掛けが効いた。彼女の慈善事業がのちに巨大化する原型が、すでにここにある。

30年続く「本の配達」を支えた仕組み

イマジネーション・ライブラリーが世界規模まで育ったのは、善意を「運営インフラ」として組み立てたからだ。本部が中央データベースの管理・書籍の選定・卸値の交渉・毎月の郵送を担い、資金集めと地域への普及は現地パートナーに委ねる。この分業が30年動き続けている。

現地パートナーには企業・学区・団体・個人が名を連ね、それぞれが地元やオンラインで登録を呼びかける。仕組みは開かれていて、プログラムが未導入の地域なら、501(c)(3)(米国の非営利団体の税制区分)の非営利スポンサーを確保し書籍と郵送の実費を集めれば、誰でも正式パートナーとして参加できる。慈善を一代限りのポケットマネーで終わらせず、他人が引き継げる形に標準化したこと。それが、創設以来3億冊超という規模を可能にした。

「もっと夢を見て」を引き継ぐのは誰か

プログラムはパートンの死後も止まっていない。運営は非営利団体が担い、世界中の地域パートナーが今も新たな子どもを登録し続けている。生まれた日から5歳の誕生日まで、希望すれば毎月一冊が郵便受けに届く。

パートンは子どもたちに「もっと夢を見て、もっと学んで、もっと思いやり、もっと自分になって」と語りかけていた。歌声はやんでも、毎月どこかの玄関に届く一冊が、次に本を開く子どもの背中を静かに押していくのかもしれない。