オーラファーミングバトルは、2000年代初頭のダンスバトルを下敷きにした対戦型の遊びだ。メキシコ、ブラジル、コスタリカでは、わずか1週間で街の公園や大学の中庭に広がった。
「オーラファーミングバトル」とは何か
オーラファーミングとは、力を抜いたまま自然に格好よく見える行為で注目(英語圏のネットスラングでいう clout〈クラウト〉)を集めることを指す。そのバトルは、観客の輪の中で2人が交互に"技"を披露し、より大きな歓声を勝ち取った方が称えられる即興ゲームである。
この遊びが最初に注目を集めたのは2024年だった。インドネシアの当時11歳の少年ラヤン・アルカン・ディカが、走る小舟の上で悠然と踊る動画が拡散し、「オーラを持つ子ども」として世界中でミーム化した。それが今、ラテンアメリカでは観客を集める見世物へと形を変えている。
披露される"技"は、指で数字をつくるネットミームのジェスチャーや、片腕を顔に当てて反対の腕を斜めに伸ばす「ダブ」など、どれもそれ単体では到底クールとは言えない動きばかりだ。だが、真面目に格好つけることをあえて笑い飛ばすZ世代の感性にはまり、米ビジネス誌『ファストカンパニー』が報じたように、この対戦はごく短期間で爆発的に広がった。
卵を割り、松葉杖で踊る
このバトルの唯一の掟は「奇妙であればあるほどよい」だ。勝っても賞金はわずか、あるいは何もない。それでも参加者は、その場の笑いのために全力を尽くす。
メキシコ・モンテレイの名門校テクノロジコ・デ・モンテレイでは、ある青年が床に身を投げ出して「ワーム」を踊り始めた。対する相手は、ひたすらしゃがんでは跳ぶ動作を繰り返して応戦したという。もはや優劣の基準など誰にもわからない。
メキシコシティのパンアメリカーナ大学の会場は、さらに混沌としていた。一人は自分の額で生卵を割り、別の一人はホラー映画『スクリーム』の殺人鬼ゴーストフェイスの扮装で踊り出し、さらに別の男は松葉杖をつきながら「ダブ」を決めてみせた。同じ市内のメキシコ公園で開かれた回には、スペインの人気歌手ロザリアがふらりと見物に現れたと伝えられている。
なぜラテンアメリカで火がついたのか
ネット上の悪ふざけを現実の広場に持ち出す文化が、この地域には以前から根づいていたためだ。2008年に起きた「パンク対エモ抗争」が、その原型といえる。
このとき、メキシコシティでも指折りの繁華街の交差点に、パンクとエモという二つのネット・サブカルチャーの若者たちが集結した。オンライン上の対立が、そのまま路上の実力衝突へと持ち込まれた出来事だった。近くにいた警察は、乱闘が始まると群衆を止められず、最終的に仲裁に入ったハレ・クリシュナ運動の信者たちによってようやく収束したという。
それに比べれば、オーラファーミングバトルははるかに無害で、ただ馬鹿げている。動画のコメント欄には、面白がりつつも冷めた声が並ぶ。「少なくとも、彼らはドラッグをやってない」という一言は、この遊びの立ち位置をよく言い当てている。過去の物理的な抗争と同じ路上の熱狂が、今回は誰も傷つけない道化へと反転しているのだ。
ダサさが通貨になる遊び
このバトルに、勝ち負けの実利はほとんどない。あるのは、真面目に格好つけることそのものを笑い飛ばすZ世代の美学だけだ。
参加者たちは、格好よさを競っているようでいて、実は「格好よさ」という価値観そのものをからかっている。ある視聴者は動画にこう書き込んだ。「将来の悪口はこうなる。『お前の親父、昔オーラファーミングやってたらしいぜ』ってな」。今の熱狂が、いずれ黒歴史として語られる未来まで、彼らはすでに笑いのネタにしている。
卵を額で割る青年の前に有名歌手までが足を止める光景は、格好よさの定義そのものが若い世代の手で静かに書き換えられつつあることを、告げているのかもしれない。




