完成間近だったアルトマンの伝記映画『Artificial』は、ネットフリックスやA24など大手4社に配給を断られた。発端は、OpenAIに500億ドルを出資したアマゾンの突然の撤退だった。
ハリウッドがアルトマン伝記映画の配給を拒んだ理由
ネットフリックス、A24、フォーカス・フィーチャーズ、ワーナー傘下のクロックワークが、そろって配給を見送ったためだ。いずれもOpenAIのサム・アルトマンCEOを描く伝記ドラマ『Artificial』を、自社の看板で世に出すことをためらった。
監督を務めたのは、ルカ・グァダニーノだ。撮影後の仕上げ作業はほぼ終わり、作品は完成目前だった。当初はアマゾンMGMが配給を担い、賞レースをにらんだ短期間の劇場公開を年内に予定していたという。
2027年初頭にはより広い公開が、さらにSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)映画祭での上映も組まれていた。ところがそうした計画は、いまや白紙に戻っている。話題の監督が撮り上げた完成作が行き場を失うのは、きわめて異例だ。
500億ドルの出資が生んだ利益相反
配給拒否の根に横たわるのは、カネの流れだ。アマゾンは今年、OpenAIに500億ドルを投じた。AI事業へ本格参入する企業が、そのAIを率いる経営者を否定的に描く映画を世に送り出す動機は乏しい。
アマゾンMGMは先週、配給しない方針を突然発表した。作品の完成度を考えれば唐突な判断であり、業界を驚かせた。理由について同社は多くを語らず、米メディア『The Verge(ザ・バージ)』の報道によれば「別のスタジオが配給したほうが作品のためになる」とだけコメントしている。
テックマネーとハリウッドの距離は、急速に縮まっている。グーグルがAI映画ツールの開発に向けてA24へ出資したとも報じられた。資本がエンタメ業界に流れ込むほど、「誰を批判できないか」という見えない線引きが太くなっていく。
それでも作品を世に出そうとする動き
名乗りを上げ続ける会社もある。インディペンデント系のNeon(ネオン)とMubi(ムビ)は、いまも『Artificial』への関心を失っていないという。
大手が降りた作品を拾うのは、たいてい体力で劣る独立系だ。商業的な計算よりも、作品そのものの価値や話題性に賭ける文化が、こうした会社には残っている。皮肉なことに、最も自由に動けるのは最も小さなプレイヤーなのかもしれない。
500億ドルの沈黙を破るのが、ハリウッドの巨人ではなくインディーズ2社になるのだとしたら、それは皮肉であると同時に、表現の独立がまだ生きている証でもある。





