2026/06/23
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中国の大学が語学学科を廃止、AI・ロボット専攻へ転換。削減最多は日本語の8校

中国の大学が語学学科を廃止、AI・ロボット専攻へ転換。削減最多は日本語の8校

2026年5月の調査では、中国の70大学が語学関連学科の縮小を発表し、削減数は日本語が8校、ドイツ語が5校、翻訳学が5校に上った。

なぜ中国の大学は語学学科を廃止しAI専攻へ向かうのか

翻訳者や語学教師といった従来の就職先がAIに侵食され、学生が語学専攻を敬遠しはじめたためだ。中国の教育コンサル企業MyCOS(マイコス)の調査によれば、かつて最も伸びていた外国語系の学科が、いまや最も急速に縮んでいる。

「外国語専攻は長年、中国で最も成長した大学プログラムのひとつだった」と、MyCOSはまとめた報告書で指摘する。だが世界情勢の変化とAI翻訳ツールの台頭が、これらの学科に養成方法の見直しを迫っているという。

削減の波は語学だけにとどまらない。2020年から2024年にかけては、アリババやJD.com(京東)が牽引した内需の冷え込みを映して、電子商取引系の学科が大きく減らされた。2025年に最も削られたのはマーケティングで、70大学のうち16プログラムが姿を消した。中国の大学は、国家の経済目標に合わせて「何を学ばせるか」を機敏に組み替えてきた。

「具身智能」と「低空経済」、新設される38の専攻

中国教育省は新年度に向けて38の新専攻を承認し、その大半をAIとデジタル分野が占めた。なかでも目玉が「具身智能」、自律機械やヒューマノイドロボットのように身体を持つAI技術を指す中国語だ。

2026年4月、教育省は9つの大学にこの「具身智能」専攻の学生募集を認めた。ほかにも商用AI、データインテリジェンス、ドローンなどが飛び交う空域を産業化する「低空経済」、半導体製造装置、レアアース科学といった専攻が並ぶ。いずれも国家の戦略産業を支え、将来の経済成長に向けた人材供給を狙ったものだとされる。

芸術系の名門・中国伝媒大学も例外ではなかった。写真、漫画、ビジュアルデザインなど5つの専攻を廃止し、「知能映像芸術」といったAI融合型の新プログラムを設けている。人文・芸術の看板を残しつつ、その中身をAIで塗り替えているわけだ。

国家主導の中国、ボトムアップの米国

中国の強みは、速度と規模にある。AIを国家の教育計画そのものに組み込み、トップダウンで一気に専攻を作り変える。一方の米国は分権的で、大学や学部ごとに対応がばらばらだ。

シラキュース大学で中国と米国の高等教育を研究するイングイ・マー教授は、この違いをこう説明する。「中国の利点は、特定分野で人材を育てる速さと規模だ。リスクは過剰修正と過密で、長期的な重要性が理解される前に切られてしまう分野が出かねない」。米国については「強みは多元性にある。分権的だからこそ、実験や多様性、ボトムアップの革新が生まれる。弱みは分断と格差だ」と語る。

米国もAIに無縁ではない。AI修士課程は2022年から2026年でほぼ倍増し、いまや304校がAI関連の学位を提供している。それでも米国のテックや経済界の大物は、AIがむしろ人文系の価値を高めると主張する。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、英語専攻こそ最も成功しうる専攻だと述べた。AIに指示を出す「プログラミング言語」は、もはや人間の言葉だからだという。

語学は、それでも消えないのか

専門家は、語学教育がなくなるとは見ていない。役割が「自分で翻訳する力」から「AIの翻訳を指揮し、その質を見極める力」へと移っていくとみられる。

中国伝媒大学で60年続く「スワヒリ語翻訳:理論と実践」を教えるアオ・マンユン氏のもとには、AIが一瞬で訳せるのに人間の翻訳に意味はあるのか、と問う学生が現れた。そこで授業は作り替えられた。「目標はもう、翻訳の仕方を教えることではありません」と、同氏は国営紙・人民日報に語る。「複雑な翻訳をAIに指揮させ、その品質を定義し評価する力を育てることです」

AIが外国語学習に与える影響を研究するパデュー大学のシャオホア・ファン氏も、語学の授業は残ると楽観する。「言語を本気で極めたい学生や、言語を仕事の柱にしたい学生を、AIが置き換えることはない」。60年続くスワヒリ語の授業が、AIを部下として使いこなす訓練の場へと姿を変えつつある。語学そのものが消えるのではなく、語学を学ぶ人間の役回りが静かに書き換えられているのかもしれない。