TikTokで日焼け止めを否定する動画は、全体ではごく少数にとどまる。それでも「有害」「発がん性」「日焼けは危険でない」といった主張を含むわずかな投稿が、いいね・シェア・コメントで桁違いの反響を集めていた。2026年6月、米紙ワシントン・ポストが報じた新研究の結論だ。
なぜ日焼け止めのデマはTikTokで目立つのか
デマ動画の数が多いからではない。否定派の主張に強く共感する一部のユーザーが集中的に反応し、ごく少数の動画だけが桁違いに拡散するためだ。
ワシントン・ポストが2026年6月20日に報じた研究によれば、TikTok上で日焼け止めを否定する動画はそもそも少数派にとどまる。大半の投稿はむしろ正確な情報を伝えていた。それでも、否定的なわずかな動画が反響の量で全体を圧倒していたという。
この偏りが厄介だ。視聴者の体感では、「日焼け止めは危ない」という声が実際よりもずっと大きく聞こえてしまう。アルゴリズムが拾うのは中身の正しさではなく、反応の強さだからだ。怒りや不安をかき立てる主張ほど、コメント欄が伸びる。結果として、ごく一部の極端な動画がおすすめ欄の常連になっていく。
同じ構図は、ワクチンや食品添加物をめぐる議論でも繰り返されてきた。正確な情報は淡々と流れ、扇情的なデマだけが拡散の燃料を得る。今回の研究は、日焼け止めもその例外ではないことをあらためて示した。
「発がん性」「太陽は危険でない」という主張
研究が問題視したのは、日焼け止めを「有害」「発がん性物質を含む」と断じ、さらに「日光を浴びても危険ではない」と主張する動画だ。
日焼け止めへの懐疑論そのものは新しくない。皮膚科医や医療の専門家が以前から警戒してきたテーマだという。ただ、SNS上では科学的な検証よりも、「自然志向」や「化学物質への不信」といった感情が前面に出やすい。
こうした主張の危うさは、結論を反転させてしまう点にある。「日焼け止めが有害」なら塗らない方がよく、「太陽は危険でない」なら無防備に浴びてかまわない。そう受け取った視聴者の行動は、紫外線対策から確実に遠ざかる。皮膚科の世界で積み上げられてきた予防の常識と、真っ向からぶつかってしまう。
拡散数ではなく中身で選ぶ
動画の信頼性は、いいねの数とは無関係だ。反響が大きいほど正しいわけではなく、むしろ扇情的な主張ほど数字が膨らみやすい。
今回の研究が示したのは、デマの「量」より「届き方」を見るべきだという視点だろう。少数でも強く拡散する声は、世論を実際以上に動かしてしまう。だからこそ、一本の動画が集めた数字ではなく、発信元や根拠をたどる癖が効いてくる。
次にTikTokで「日焼け止めは危ない」という一本に出会ったとき、確かめるべきは集まったいいねの数ではない。誰が何を根拠に語っているか、その一点だ。問いを一つ挟むだけで、この夏の肌を守る判断は静かに変わっていく。





