2026/06/20
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セロトニンの95%は腸で作られる。気分の不調が示す腸脳軸の症状チェック20

セロトニンの95%は腸で作られる。気分の不調が示す腸脳軸の症状チェック20
Photo by BUDDHI Kumar SHRESTHA on Unsplash

腸には約5億個の神経細胞があり、体内のセロトニンの約95%を生み出している。腸と脳は迷走神経や免疫系を介して双方向に会話し、その不調は気分・思考・エネルギーに直結する。

なぜ腸の不調が、気分まで変えてしまうのか

腸で起きた炎症が、血流に乗って脳に届くからだ。腸の壁から漏れ出した細菌由来の物質が免疫を刺激し、その信号が脳の働きを鈍らせる。

腸はしばしば「第二の脳」と呼ばれる。約5億個の神経細胞を備え、迷走神経を通じて脳と絶え間なく信号をやり取りしているためだ。さらに体内のセロトニンの約95%は、脳ではなく腸の細胞が作り出している。この腸のセロトニン自体は脳に直接届かないが、迷走神経を介した信号として、脳の神経環境に影響を与えるとされる。

とりわけ注目されているのが炎症の経路だ。腸の細胞のすき間が緩む「腸の透過性亢進」が起きると、リポ多糖(LPS)と呼ばれる細菌由来の物質が血流に入り込む。すると免疫が反応し、TNF-αやIL-6といった炎症性物質が増えていく。これらが脳に達してミクログリア(脳の免疫細胞)を活性化させ、抑うつ症状と結びつく神経炎症の状態を作り出すという。研究者のなかには、これを「炎症型のうつ」という独立した型として捉える動きもある。

「腸脳軸」の不調を示す症状を、チェックしてみる

腸と脳の会話がうまくいかないと、気分や思考に具体的なサインが現れる。理由のない落ち込みや、状況に不釣り合いな不安が、その代表だ。

理由もなく気分が落ち込む。状況に見合わない強い不安に襲われる。感情をうまく扱えない。こうした状態は、腸からの信号である可能性が指摘されている。たとえば明確なきっかけのない持続的な抑うつでは、標準的な抗うつ薬が効きにくい人や、消化器の不調を併せ持つ人ほど、腸が一因になっているとみられる。

『Quartz(クオーツ)』の元記事は、研究者や臨床医が腸脳軸の不調と関連づける20のサインを挙げている。注意したいのは、これらが医師の診断に取って代わるものではないという点だ。記事自体も、目的は「腸を評価対象に含めるべきかを医師と話し合うための材料を提供すること」だと明言している。気になる症状があれば、自己判断で終わらせず専門家に相談する入口として使うのが正しい。

ストレスが腸を壊し、腸がまたストレスを生む

この関係は一方通行ではない。脳のストレス反応が腸を乱し、乱れた腸がふたたび脳に不調を返す、双方向のループになっている。

ストレスを感じると、コルチゾールというホルモンが腸の動き・透過性・腸内細菌の構成を変えてしまう。その結果として腸の状態が悪化し、炎症の信号がまた脳へ送り返される。心理的な状態と消化機能のあいだに、フィードバックの回路が生まれるわけだ。

このループを裏づける事実もある。過敏性腸症候群(IBS)の人は、一般の人より不安やうつを抱える割合が著しく高い。気分障害を持つ人と持たない人とでは、腸内細菌の構成にも測定可能な差が出る。ただし個別のケースで、腸の不調が気分を悪くしているのか、気分の落ち込みが腸を乱しているのか、あるいは第三の要因が両方を生んでいるのか、その因果の向きはまだ解明しきれていない。

腸内の多様性は、数週間で取り戻せる

腸内細菌の多様性は、食事を変えれば数週間という単位で変化しうる。そしてその多様性の高さは、良好な気分やストレス耐性と結びついている。

冬場に気分が落ち込みやすいのは、日照や体内時計の影響だと考えられてきた。だがそこには食事の要素も絡む。冬は食物繊維が減り、超加工食品が増えがちで、こうした食生活は数週間のうちに腸内細菌の多様性を下げてしまうという。逆に言えば、繊維と多様性を意識した食事は、同じ速さで状態を引き上げられる可能性がある。臨床試験では、食事の改善や善玉菌の摂取が気分スコアを実際に押し上げた例も報告されている。

気分の波を、意志の弱さや性格のせいにしてきた人は少なくない。だが脳と腸をつなぐ太い神経の先では、いま静かに会話が交わされている。その調子は、明日の一皿から少しずつ整えていけるのかもしれない。