ノースカロライナ大学グリーンズボロ校の心理学者は、掲示板サイトRedditから13万4,000件超のパパジョークを収集し、笑いを生む仕掛けを「3つの柱」に絞り込んだ。
なぜ心理学者がパパジョークを13万件も集めたのか
ノースカロライナ大学グリーンズボロ校の心理学教授ポール・シルヴィアは、掲示板サイトRedditの「dad jokes」コーナーから、テキストマイニングで13万4,000件を超えるギャグを集めた。狙いは、笑いの"有効成分"を突き止めることだった。
「数十万件をかき集めて、おやじユーモアの活性成分を探った」と、シルヴィアは米公共ラジオNPRのインタビューで語っている。構築したデータベースは一般にも公開され、本人いわく「病的なまでに好奇心の強い人」なら誰でも覗けるという。父の日を前にした、いかにも人を食った研究テーマだ。
膨大なギャグを2万、3万と読み進めるうち、笑いの仕掛けは驚くほどはっきり見えてきたらしい。
面白さを決めるパパジョークの「3つの柱」
シルヴィアが特定した核心は、①ダジャレ ②慣用句の文字どおり解釈 ③もったいぶった"反ユーモア"の3つだった。どれも、短く・毒がなく・上品で家族向き、という共通の条件の上に成り立つ。
第一の柱はダジャレ。日本の「おやじギャグ」がほぼダジャレと同義であるように、英語圏でも語呂合わせはパパジョークの王道だ。第二の柱は「文字どおり解釈」。慣用句やお決まりの言い回しを、あえて額面どおりに受け取ってひっくり返す。シルヴィアお気に入りの一句「昔は石鹸(ソープ)依存症だったが、今はクリーンだ」は、その典型例である。"clean"が「きれいになった」と「依存から抜けた」を同時に指す仕掛けだ。
第三の柱が、もっとも厄介な「もったいぶった反ユーモア」。子どもが「パパ、おなかすいた」と言えば、すかさず「やあ"おなかすいた"くん、僕はパパだ」と返す。散歩中に「靴に何か入った」と言われれば「それ、君の足じゃない?」ととぼける。笑わせるというより、軽くからかって相手をうめかせる芸風である。
パパジョークは家族の「うめき声」で完成する
シルヴィアによれば、パパジョークの価値は笑いの巧拙ではなく、人を引き寄せる力にある。うめかれること自体が、家族をつなぐ合図になる。
「ユーモアがすべきことは、人と人を引き寄せることだ」と彼は言う。父が子をからかえば、10代の子どもたちはすぐにやり返してくる。その応酬こそが、笑いを分かち合う家族の時間そのものだという。実際、取材時のシルヴィアは妻と2人のティーンエイジャーを乗せ、小さすぎるレンタカーでドイツを旅していた。家族は研究の話を「必要以上に聞かされている」らしい。
くだらないと一蹴されがちだが、13万件のうめき声を分析した教授の結論は、案外あたたかい。狭いレンタカーの車内でうめき声を浴びながら、その心理学者は今日もまた、最高の素材を集めているのかもしれない。





