30歳になりました。自分は「時間が足りない」という不安に苦しむタイプなので、誕生日のたびにいつものストレスと落ち込みが押し寄せてくるだろうと思っていました。でも、なぜか今年は違うのです。もっと穏やかで、もっと自信があって、未来にもっとワクワクしている。自分より若い人から見れば、30年は長く感じるかもしれません。年上の人から見れば、たいした年数ではないかもしれません。これから探求したいことはまだ山ほどあります。それでも、この地上を歩いてきたわずかな年月で学んだ、いちばん大切なレッスンをリストにして祝いたくなりました。
チャーリー・マッケジー「Kind Boy」
1. 正しくやることより、正しい理由でやることのほうが大切。 たくさん間違えてきたし、これからもたくさん間違えるでしょう。でも、自分がした最大の間違いは、何かがうまくいかなかったときではありません。間違った理由で自分に何かを強いたとき、それが最大の間違いでした。まわりから期待されていると思い込んだこと、履歴書に映えると思ったこと、もっとも論理的な次の一歩だと考えたこと。学ぶのに長い時間がかかりましたし、いまもある程度は格闘中です。でも自分を前へ進ませてくれるのは、好奇心であり、学びたいという衝動であり、つながりたいという思いなのです。こちらのほうが、はるかに力強い原動力です。
2. 人生は一度きりではない。 このコマ漫画は、自分の考え方に大きな影響を与えました。たしかに、いつか自分は死にます。でも、何かを習得するにはおよそ7年かかります。88歳まで生きるとしたら、11歳以降、何かの達人になるチャンスが11回もあるのです。多くの人は自分を一度も「死なせず」、たった一つの人生にしがみつきます。でも、ある人生では詩を書き、別の人生ではものを作り、また別の人生では真実を探す。あなたにはいくつもの人生があります。それを生きるのです。
3. 友だちは来ては去る。それでいい。 30年もあれば、たくさんの人と出会います。学んだのは、はかない友情にも、長い友情に負けないくらい人を変える力があるということ。1年だけ、1週間だけ、たった一晩だけの友情でも、そうなのです。何人かの友を失ったことを悔やむより、そもそも彼らから学べたことに感謝しています。
4. どんな人もおもしろい。 これと関連して気づいたのは、正しい問いを投げかければ、誰からでも何かを学べるということです。人はいくつもの人生を生き、あなたが行ったことのない世界の一部を探検し、あなたが読んだことのない本を読み、あなたがしたことのない会話をしてきました。その人の考え方を理解しようとすること、とくにそれが自分には異質で居心地が悪く感じられるときほど、自分を成長させてくれる素晴らしい方法になります。
5. ネットワーキングなんてくだらない。 20代前半、学校でネットワーキングのワークショップがありました。人脈づくりを学ぶことが成功のカギになる、というのです。でも自分には一度もうまくいきませんでした。人脈をつくるためだけに仕事のイベントへ行くのは落ち着かない。うわべだけに感じてしまうのです。一方で、自分が手にした仕事のチャンスのほとんどは、純粋な好奇心と偶然の出会いから生まれました。Googleでの最初のインターンは、飛行機で隣に座った見知らぬ人とのなにげない会話までさかのぼれます。コンサルティングや講演の機会の多くは? 自分の記事をたまたま見つけてくれた人たちから。いちばんよかったイベントは? パーティーで出会った人が開いた、小さくて気どらない交流会でした。自分の経験では、人脈づくりに励むより、思いきって外に出て自分らしくいるほうが、ずっといいのです。
6. 消費するより、創造する。 思いきって外に出ることの大きな部分は、創ることです。書く、ツイートする、写真を撮る、絵を描く、ポッドキャストやニュースレターを始める、地域のイベントやオンラインのコミュニティを立ち上げる。これと表裏一体なのが「もらうより、与えよ」。自分の時間を差し出し、アイデアを分かち合えば、人のほうから見つけてくれます。たとえ見つけてもらえなくても、生成効果のおかげで、受け身でただ消費するよりずっと多くを学べるのです。
7. フィクションはノンフィクションより力がある。 今年はめずらしく、ノンフィクションの本を読みすぎました。前にこうなったのは、最初のスタートアップを立ち上げたときだけです。気づいたのは、ノンフィクションは自分を機械的で直線的な考え方にしてしまうということ。著者にうまくいったレシピを当てはめれば、自分にもうまくいく、という具合に。一方フィクションを読むと、直感的で創造的に考えられます。自分の中になかった新しいつながりが生まれる。設計図を当てはめようとするのではなく、いくつもの可能性を思い描けるのです。例外は科学の本と歴史の本。この二つを合わせると、アイデアの発電所になります。
8. いいことはたいてい怖い。でも、怖いものがいつもいいとはかぎらない。 居心地のいい場所から出ることは、定義からして居心地が悪いものです。怖く感じるチャンスには、「ノー」と言うほうが簡単。でも、自分がしてきた最高の決断の多くは、最初は怖かった。東京への引っ越し、Googleを辞めたこと、自分の歩みを人前で共有すること。ただし注意も必要です。怖いからといって、それがいいとはかぎりません。私たちのDNAには優れた自己防衛のしくみが組み込まれていて、自分の直感に少なくとも耳を傾けることも、また大切なのです。
9. 体の健康なしに、心の健康はない。 ご存じのとおり、自分は心の健康をもっと大切にしようと強く訴えています。自分の場合、それはいつも体をもっといたわることから始まりました。落ち込んだりストレスを感じたりしているとき、散歩に出かけるというただそれだけのことに大きな力が必要でした。でも、何がおかしいのかを深く掘り下げる前に踏み出せる、いちばん最初の一歩だったのです。同じように、睡眠が足りず、水分が足りず、ちゃんと食べていなければ、心の健康を手に入れるのは不可能だと思います。少なくとも自分の場合、体の健康は心の健康のいいバロメーターです。心と体は、いっしょに働いているのです。
10. 習慣があなたを決める。 前の話と関連して、自分は習慣やルーティン、儀式の積み重ね以外の何ものでもない、と学びました。若いころは、ある人物像を演じることで自分のアイデンティティを定義しようとしていました。でもそれは、本当の信念や価値観と食い違うこともあった。たぶん、そもそも自分の信念や価値観が何なのかをわかっていなかったのです。いまは言葉でそれを定義しようとせず、ただ自分の行動の積み重ねが、自分という人間の絵を描いてくれるのにまかせています。その絵が変わりつづけても、それでいい。でも、いまのあなたの習慣だけが、あなたが誰なのかを決めます。毎日本を読んでいる? あなたは読書家です。毎日走っている? あなたはランナーです。それくらいシンプルなのです。(このテーマには、ジェームズ・クリアの『ジェームズ・クリア式 複利で伸びる1つの習慣』が格好の入門書になります)
11. 旅をするのに、飛行機はいらない。 自分は旅が大好きです。これまでに40か国以上を訪れました。でも、地元のコミュニティとつながることでも素晴らしい経験ができました。ホームレスの支援施設でウェブサイトの作り方を教えるボランティア、地元の公園の清掃の手伝い、学校の子どもたちといっしょにインターネット上でおもしろいものを作ること。美しい心は、いたるところにあります。そのいくつかは、すぐそこの角を曲がったところにあるのです。
12. 愛する人を大切に。 ここ数年で、自分が愛する多くの人が亡くなりました。若すぎる人もいたし、年上でも、やはり若すぎる人もいました。ティム・アーバンのこの美しい記事が示すように、高校を卒業するころには、私たちは親と過ごす対面の時間の90%をすでに使い果たしています。自分は、残りの10%を大切にすることを学びました。大人になるにつれて、両親と質の高い時間を過ごすことの優先順位が上がっていったのです。パリに帰るときはかならず会うようにしているし、いっしょにバーニングマンへ行き、両親はロンドンにも来てくれて、今年は父とアジアを旅します。
13. 優先順位が大事。 どんな人もおもしろいと信じてはいますが、それでも時間はいちばん貴重な通貨です。つまり、選ばなければなりません。どう時間を使いたいか、そして誰と過ごしたいかを、ほんの数分でいいから本気で考える。それだけで、将来感じるかもしれない後悔の量を減らせるのです。
14. 人を本当に変えることはできない。でも、その人の最高を引き出すことはできる。 人を深いレベルで変えようとするたび、つまり別の誰かに作り変えようとするたびに、自分は失敗してきました。その理由は、不可能なだけでなく、そうしようとすること自体が間違っているからだと思います。だからいまは、まわりの人の中にある最高のものは何かを見極め、それを引き出すために自分にできるささやかな手助けを差し出すようにしています。正しい方向への小さなひと押しで済むことはうまくいき、価値観や信念をまるごと変える必要があることはうまくいきません。自信のない創造的な友人? それなら手伝えます。女性蔑視の人? 無理です。(人によっては、価値観とは関係のない、もっと深い困難を抱えていることもあります。その場合は友人として喜んで話を聞いて支えますが、専門家の助けも受けるよう、いつもすすめています)
15. 賢さより、やさしさ。 ヴィサカン・ヴィーラサミーが言うように、「賢い人たちの一部には(そして賢くなりたい人たちの一部には)、やさしさなんて不要だ、面倒だ、弱虫のためのものだ、などと考える人がいる。それはとても残念なことだと思う。あなたの知性は、やさしさによって豊かになるのだから」。世間でいう意味で賢くなるには、たくさんの努力が必要です。新しいことを学び、点と点をつなぐ。でも、やさしくなることは今日から始められます。やさしさはあなたを好奇心旺盛で、心の開いた人にしてくれます。そして自分は、やさしさが心を養い、人と深いレベルでつながることで、計りにくい有機的なかたちで、実際にあなたを賢くしてくれると信じているのです。
16. おもしろい人になりたいなら、おもしろがる人になれ。 質問をするのは、ただ「していい」ことではなく、「必要な」ことです。もっと質問しましょう。誰かが何かを話してくれたら、「もっと聞かせて」と言う。好奇心があるふりをするのではなく、本当に好奇心を持つのです。
17. 弱さを見せることが、深い関係へのカギ。 傷つけられるかもしれない状態に身をさらすのは、こわいものです。自分はかつて強くありたかった。強くふるまい、強く見られたかった。でも、自分もみんなと同じくらいぐちゃぐちゃで途方に暮れているのだと受け入れると決めた日から、多くの友情が花開きました。あの仮面をかぶりつづけていたら、けっして育たなかった友情です。自分をさらけ出すと、相手にも「あなたもそのままでいいんだよ」と伝えることになります。そして相手の心の中をちらりとのぞける。それは、この世でいちばん素晴らしいことなのです。
18. 人はあなたの考えを読めない。 何か思ったなら、口に出しましょう。自分の考えや気持ちを人が察してくれると期待しないこと。望んだとおりに動いてくれなかったからといって、恨みを抱かないこと。ただ、伝えればいいのです。
19. とにかくやってみる。 楽器を弾けるようになりたい? コードを書けるようになりたい? イラストを描けるようになりたい? とにかくやってみるのです。考えるのをやめて、動き出しましょう。練習して、手を泥だらけにする覚悟があれば、学べないものなど何もありません。数か月後に振り返れば、自分がどれだけ進歩したかに驚くはずです。どこから始めればいいかわからないなら、適当に選びましょう。あなたは、自分が何を知らないかすら知らないのです。進みながら、わかっていきます。
20. 目標ではなく、進み具合を共有する。 自分は人前で進めることの大ファンです。でも研究によれば、人は自分の意図を秘密にしておくほうが、目標を達成しやすいそうです。目標について話すと、早すぎる称賛を受けてしまい、それが達成の代わりになってしまうから。一方で、進み具合を共有することは目標達成を助ける、とわかっています。仮の、未来の最終結果ではなく、その過程に対して称賛を受けられるからです。自分自身も、これは本当だと実感しました。だから目標は自分の胸にしまっておき、進み具合だけは進めながら人前で共有しているのです。
21. 過程に恋をする。 同じ流れで言えば、最終的な目標にこだわりすぎないこと。目標は変わるかもしれないし、失敗するかもしれないし、別の方向へ進まなければならないかもしれません。自分の情熱を生かして集中とやる気を保てば、結果はあとからついてきます。
22. 書くことは超能力。 この30年で身につけたあらゆるスキルの中で、書くことはいちばんレバレッジの効くものです。お金はかからないし、共有でき、使い回せて、検索もできる。オンラインのコミュニティや、製品や、イベントなどの土台にもなります。ノートパソコンとインターネットさえあれば、誰でも書き始められる。そして自分は、誰もが書くべきだと思うのです。
23. 失敗しても、誰も気にしない。 あなたの最大の批評家は、あなた自身です。他人がどう思うかを気にするのは、もうやめましょう。本当のところ、人はあなたの成功にも失敗にも、たいてい何も思っていません。自分のことを考えるのに忙しいのです。落ち込む話に聞こえるかもしれませんが、じつはこれは解放です。あなたは自由に挑戦し、試し、失敗し、また挑戦できる。どうせ誰も気にしていないのだから、楽しめばいいのです!
24. 違う考え方をするには、違うことをする。 みんなと同じものを取り入れていて、革新的なアイデアが浮かぶと期待することはできません。違う本を読み、違う番組を観て、違うイベントへ行きましょう。取り入れるものが違えば、生み出すものも違ってくるのです。
25. ずっと学び手でいる。 2018年、自分は神経科学を学ぶために学校へ戻ることにしました。2019年には、コードの書き方を学ぶことにしました。毎年、本を読み、ドキュメンタリーを観ます。新しい人に会えば、その人の関心ごとをたずねます。学校を卒業したからといって、学ぶのをやめてはいけません。学ぶことが、人生をおもしろくしてくれるのです。
26. 苦しみには意味がある。 いちばんつらかった経験を振り返ると、それが今日の自分をかたちづくってもいることに気づきます。自分はかつて、感情を閉ざそうとしていました。いまは、自分の感情のすべてを受け入れています。いいものも、悪いものも、喜びも、痛みも。感じることは、生きているということなのです。
27. 怒りは、決して答えにならない。 悲しんだり、がっかりしたり、途方に暮れたりするのはかまいません。でも、怒ることは自分に何もいいものをもたらしませんでした。やさしさと怒りを同時に感じることはできません。誰かに怒っているとき、その人の立場に身を置くことはできないのです。怒らないこと。
28. 悪意を前提にしない。 「ハンロンの剃刀」とも呼ばれますが、ほかの動機で説明できることを、悪意や残酷さのせいにしてはいけません。人には善意があると考えましょう。悪気のない間違いは起こるものです。これもまた、結局は質問をすることに尽きます。質問すれば、相手はあなたを傷つけるつもりなどなかったのだと、たいていすぐにわかるのです。
29. 小さなものの中に、美しさを見つける。 自分はかつて、せわしない生き方をしていました。できるだけ多くをこなそうとし、自分の考えから逃げ、立ち止まる時間をけっして取らない。でも、小さなものを味わうことを学びました。友だちの笑顔、かわいらしい小道、いい本とともに飲む一杯のお茶。人生のすべての瞬間が、生産的である必要はありません。まわりの世界と、美しさが宿る大切な瞬間を味わう時間を取ること。それも、生きているということの一部なのです。
30. 誰かの人生をうらやんで過ごす一秒は、自分の人生を無駄にする一秒。 自分の暮らしをこれほどオープンにインターネットで分かち合う時代には、他人と自分を比べる渦に簡単に飲み込まれてしまいます。インターネットは素晴らしい場所です。でも、自分でかたちづくるのではなく、向こうに自分をかたちづくらせてしまえば、それは破壊的にもなりうる。他人と自分を比べないこと。クリス・サッカがかつて言ったように、「言い訳なんかせず、堂々と自分のままで変わり者でいよう」。
以上です。30歳になる前に学んだ、人生の30のレッスン。これからの10年で、もっと多くを学ぶのが待ちきれません。そして、あなたたちみんなとこの旅をいっしょにできることに、ワクワクしているのです。





