2026/05/25
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看護師歴40年の72歳女性が医学部卒業、75歳で医師になる

看護師歴40年の72歳女性が医学部卒業、75歳で医師になる

7歳の顕微鏡、65年後の卒業式

ドーン・ザイドギースト=クラフトが医学への情熱に目覚めたのは、7歳のときだった。単核球症の療養で自宅にこもっていた彼女に、母のポーラ・ウェスナーが顕微鏡を贈った。ミールワームや葉っぱをレンズの下で観察し続ける娘を見て、母は「この子はいつか医師になる」と予言したという。

しかし人生は、予言どおりには進まなかった。ザイドギースト=クラフトはナースプラクティショナー(NP、上級看護師)として臨床の道を歩み、40年間にわたり患者を診ながら4人の子どもを育て上げた。米国のNPは診察・処方・診断を行う高度な医療専門職であり、彼女のキャリアはすでに十分に充実していたと言える。

それでも、幼い日の夢は消えなかった。ワシントン・ポストの報道によると、72歳になった彼女はついに医学部を卒業し、2026年7月から3年間の研修医課程に入る。

40年の臨床経験を持つ「新人」

研修医課程は若い医師にとっても過酷なことで知られる。長時間の勤務、膨大な症例、絶え間ない臨床判断の連続だ。72歳でこの世界に飛び込むことへの懐疑的な見方は当然あるだろう。ワシントン・ポストの記事に寄せられた538件のコメントも、称賛と疑問の両方が入り混じっていたという。

だが、ザイドギースト=クラフトには他の新人研修医にはないものがある。40年分の臨床経験だ。数千人の患者と向き合い、診断し、処方してきた実績は、教科書の知識だけで現場に立つ若手とは質が異なる。NPとしての判断力が研修医としての学びを加速させる可能性は、十分にあるとみられる。

年齢がハンディキャップになるのか、それとも経験がアドバンテージになるのか。その答えは、これからの3年間が出すことになる。

75歳の医師が開く扉

研修を終えれば、ザイドギースト=クラフトは75歳の医師だ。医師としてのキャリアが何年続くかは誰にもわからない。だが彼女の歩みが示しているのは、キャリアの「適齢期」という概念そのものへの静かな異議申し立てだろう。

40年の看護経験を経て医師になるという道筋は、医療の世界では極めて珍しい。看護師の視点と医師の権限を兼ね備えた臨床家が現場に立つとき、患者との関わり方にも独自の深みが生まれる可能性がある。

7歳で顕微鏡をのぞいた少女は、65年かけて母の予言を現実に変えようとしている。研修医としての彼女の白衣には、40年分の臨床と4人の子育てと、消えなかった夢の重みが縫い込まれているのかもしれない。