2026/05/30
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アディダスが「20年で最高」のW杯広告を投下、シャラメがメッシらと路上対決

アディダスが「20年で最高」のW杯広告を投下、シャラメがメッシらと路上対決

「使い古された公式」の再発明

2002年、ナイキはマンチェスター・ユナイテッドの伝説エリック・カントナを起用し、海上のコンテナ船でストリートサッカー大会を開く広告「Cage」を制作した。2006年にはアディダスが「José」で路地裏の少年2人にドリームチームを選ばせる。2014年のナイキ「Winner Stays」も同じ手法に乗っていた。

つまり「スター選手を集めて架空の試合をする」というフォーマットは、W杯広告の黄金パターンとして20年以上使い回されてきた。Fast Companyが「20年で最高傑作」と評した新作「Backyard Legends」も、表面上はまったく同じ構造を持つ。シャラメが路地裏のドリームチームを組み、1996年以来無敗の伝説チームに挑む——ただ、それだけだ。

だがこの広告が過去作と一線を画すのは、使い古された公式を「知っている」前提で作られている点だろう。過去の名作へのオマージュを随所に散りばめながら、それ自体をユーモアに変えている。

アディダスW杯広告の浮き沈み

アディダスのW杯広告史は、実は浮き沈みが激しい。2006年の「José」が路地裏サッカーの原型を作り、2010年の「Cantina」ではダフト・パンクやスヌープ・ドッグをスター・ウォーズのモス・アイズリー酒場に放り込むという離れ業を見せた。

しかし2018年の「Creativity Is the Answer」は、メッシやポグバにスーパーモデルのカーリー・クロスやファレルを混ぜた結果、「途方もなく高額な混乱」とも評された。2022年の「Family Reunion」でようやくユーモアを取り戻し、ベリンガムやメッシを「間抜けなルームメイト」として描くことで軌道修正に成功する。

「Backyard Legends」は、「José」のストリート感覚と「Cantina」の野心、「Family Reunion」のユーモアを一本に統合した集大成と言える。

シャラメが「本物」である意味

W杯広告に俳優を起用すること自体は珍しくない。だがシャラメの場合、「ギャラで呼ばれたセレブ」ではなく「たまたま有名になったサッカーオタク」だという点が決定的に異なる。

彼はフランス・リーグ1のサンテティエンヌのファンだ。パリ・サンジェルマンでもマルセイユでもなく、サンテティエンヌを選んでいる。少年時代にはニューヨークのユースクラブ「マンハッタン・キッカーズ」でプレーし、リヴァプールのジョー・ゴメスと対戦した経験もあるという。

広告の中でメッシやベッカムと共演しても浮かないのは、彼自身がサッカーの文脈を身体で理解しているからだろう。ジダンやデル・ピエロの若き日の姿をVFXで再現するシーンには不気味な人工感が漂うが、シャラメの躁的なエネルギーがそれを打ち消している。

105億ドルの広告市場で「引き際」を知る

マーケティングリサーチ会社WARCの予測によると、2026年W杯は第2四半期だけで世界の広告支出に105億ドル(約1.5兆円)の上乗せをもたらす。非大会年と比べて1.1%の増加だ。これは広告枠の購入費だけで、制作費は含まれていない。

巨額の予算と注目が集まるほど、広告は「金をかけた割に中身がない」ものになりがちだろう。しかし「Backyard Legends」の最も巧みな演出は、5分間の大作でありながら、試合が始まる直前に「Fin」と幕を下ろした点にある。2006年「José」へのオマージュとして、アパートの上階からおばちゃんがボールを投げ下ろすシーンを再現し、キックオフの瞬間は見せずに終わる。

路地裏の少年たちの伝説、90年代からのサッカー広告の記憶、そしてシャラメの「本物のファン」としての存在感——105億ドルが飛び交う戦場で、「まだ見せない」という選択が最も賢い投資だったのかもしれない。