2026/05/25
SPARKL

中国のフカヒレ漁に米国が制裁を検討、水産物15億ドル分の輸入停止も視野に

中国のフカヒレ漁に米国が制裁を検討、水産物15億ドル分の輸入停止も視野に

フカヒレ漁の実態と中国の「5%ルール」

米国をはじめ90以上の国・地域では、サメを「ヒレ付き」のまま水揚げすることを漁業者に義務づけている。ヒレだけを切り取り、胴体を海に捨てる「シャークフィニング」を防ぐ唯一の実効策として国際的に認められた方式だ。フカヒレを切断されたサメは泳ぐ力を失い、海底へゆっくりと沈みながら死んでいくという。

一方、中国はこの方式を採用していない。代わりに、切り離したヒレの重量がサメの体重の5%以内であれば合法とする「比率規制」を敷く。Ars Technicaの報道によれば、保全科学者はこの方式を「種ごとの生物学的差異を無視し、現場での検証がほぼ不可能」と批判する。ヒレと胴体が分離された状態では、どのヒレがどのサメのものか、絶滅危惧種が紛れていないかの識別は極めて困難だからだ。

環境正義財団(EJF)が2024年と2026年に実施した聞き取り調査は、この規制の形骸化を裏づけた。南西インド洋で操業する中国遠洋漁船の乗組員のうち80%がシャークフィニングへの関与を認め、南東太平洋のイカ釣り船でも60%の乗組員がヒレを切断されたサメが海に投棄されるのを目撃したと証言している。

制裁請願に中国は「状況を把握していない」

米国の非営利団体「生物多様性センター」は2026年5月、中国がアメリカのサメ保護基準を満たしていないとして、米国政府に対し正式な制裁請願を提出した。米国海洋漁業局がこれを認め、中国を「モラトリアム保護法」違反と認定すれば、大統領は中国産水産物15億ドル(約2,250億円)相当の輸入を全面的に禁止できる。

「サメを失うことは生態学的な災害にとどまらず、深い道義的な失敗になる」と、同センターの上級科学者アレックス・オリベラは述べる。サメは成長が遅く、成熟に時間がかかり、産む子の数も少ない。それにもかかわらず年間推定8,000万頭が漁獲や混獲で命を落としており、全種の3分の1以上が絶滅の危機に瀕している。

この請願に対し、在米中国大使館の報道官は「中国は科学に基づく保全と持続可能な漁業資源の利用に深くコミットしている」と回答した。しかしフカヒレやシャークフィニング、制裁の可能性には一切触れず、請願の具体的な内容についても「把握していない」と答えるにとどまった。

フカヒレ取引の透明化は進むか

世界最大のフカヒレ取引拠点である香港では、取引の科学的な可視化が着実に進んでいる。2014年から2021年に輸入されたヒレのDNA分析では、ワシントン条約(CITES)の規制対象であるアカシュモクザメ、シロシュモクザメ、ヒラシュモクザメ、ヨゴレの少なくとも4種が確認された。切り離されたヒレからでも種を特定できる技術が、「5%ルール」の抜け穴を科学的に塞ぎはじめている。

サメの研究者エイディ・マルティネスは「フカヒレ漁は、私たちが海をどれほど搾取してきたかを映す鏡だ」と指摘しつつも、「人々がサメに個人的なつながりを感じられるようになれば、保護への関心は自然に高まる」と語る。DNA鑑定の精度向上と貿易データの透明化が、比率規制という数字のトリックを一枚ずつ剥がしつつあるようだ。