2026/05/30
SPARKL

米建築設計大手が「小切手だけの社会貢献」を改め、全社員ボランティア制を導入

米建築設計大手が「小切手だけの社会貢献」を改め、全社員ボランティア制を導入

「届いていなかった」寄付の実態

米建築設計大手MG2(コリアーズ・エンジニアリング&デザイン傘下)は、長年にわたり多額の寄付を行ってきた。支援する大義を選び、求められれば資金を出す。それが同社の社会貢献だった。

だが同社のミッチ・スミスCEOはFast Companyへの寄稿で、ある気づきを明かしている。寄付は潤沢だったが、偏っていた。すべての拠点に届いているわけではなく、すべての社員が関わっていたわけでもない。「寄付が集中し、私たちが暮らし働くコミュニティの奥深くまで届いていなかった」という。

この反省から生まれたのが「Day of Giving」だ。年に1日、全社員が有給で業務を離れ、地域のNPOでボランティア活動を行う。各オフィスが支援先を選び、社員は同僚とともに現場に出る。専門家としてでも、寄付者としてでもなく、「隣人として」参加する。この考え方が制度の核にある。

小切手では得られないもの

活動内容は多岐にわたる。草刈り、食事の準備、住宅の建設、壁画の制作——建築家にとっての通常業務とはかけ離れた作業ばかりだ。だがスミスCEOによれば、こうした共有体験こそが、会議やメールでは決して生まれない結びつきを生む。

興味深いのは、この制度が単なるボランティアプログラムではなく「体験の共有」を核に据えている点だろう。フードバンクで一緒に作業する。住宅支援プログラムで家族を支える。近隣を清掃する。役職も拠点も背景も異なる社員が、同じ汗をかくことで共通の価値観を発見する仕組みになっている。

「小切手を切るだけでは足りない。時間を使うこと、その場にいること、耳を傾けることが大切だ」とスミスCEOは語る。企業の社会貢献を「金額」ではなく「参加の深さ」で測る視点は、日本企業にとっても示唆に富むだろう。

「スチュワードシップ」は伝染する

MG2がこの制度で目指すのは、1日限りのボランティアではなく「スチュワード(責任ある管理者)」を育てることだという。前CEOのジェリー・リーの姿勢がその手本だ。リーダーシップとは認知を得ることではなく、説明責任と継続的な実行にあるとスミスCEOは同寄稿で述べている

そしてスチュワードシップには伝染力がある。一人が模範を示せば、次の一人が前に出る。この連鎖は、同社が建築設計で実践している考え方と重なるという。コミュニティは一つの建物や一つのアイデアで繁栄するわけではなく、多くの人が貢献し、空間がつながりを招き、責任が共有されるときに力を発揮する。

建物を設計する専門家たちが草を刈り、壁画を描く年に一度の日が、図面には載らない地域との接点を少しずつ築いているようだ。