ホビット村からパルテノン神殿まで——SNSが描く理想像
AI需要の爆発に伴い、米国では現在約4,000棟のデータセンターが稼働し、さらに3,000棟が新たに建設される見通しだ。数百エーカーに及ぶ敷地に、窓のないコンクリートの箱が並ぶ光景は、周辺住民にとって歓迎しがたいものだろう。膨大なエネルギーと水を消費し、環境を汚染するという実害に加え、「とにかく目障り」という感覚的な嫌悪が反対運動を後押ししている。
この不満に火をつけたのが、ベンチャーキャピタリストのジョシュア・クシュナーだ。Xに「データセンターを美しくしよう」と投稿したのをきっかけに、AIで生成した「理想のデータセンター」画像がSNSで爆発的に広まった。丘陵に溶け込むホビット村風、中世ヨーロッパの石造城砦、果てはパルテノン神殿まで——提案は壮大を極める。エコノミスト誌の編集者マイク・バードはパルテノン風のレンダリングを投稿し、「これは我々の能力を超えていない」とキャプションを添えた。
建築家の反論:「収支モデルに雰囲気の項目はない」
しかし、建築の実務に携わる人々の反応は冷ややかだった。建築家のショーン・マクガイアはXで「毎日このアプリを開くたびに、『なぜデザイナーは美しくしないのか、AIで0.0003秒で作ったぞ』という浅はかな投稿を目にする」と苦言を呈した。彼の主張は明快だ。コンセプトはボトルネックではなく、建築基準法、融資条件、ゾーニング規制という制度的制約こそが外観を決定する、と。
実際、データセンターの設計は徹底的に実用性に最適化されている。サーバーの冷却効率、電力供給の安定性、建設コストの抑制——これらの優先事項が、あの無機質な外観を必然的に生み出すのだという。窓は熱負荷を増やし、装飾的なファサードは建設費を押し上げる。収支モデルに「雰囲気」という項目は存在しない。
「倉庫」でも「神殿」でもない第三の道
この論争の中で、最も建設的な視座を示したのがデザイナーのジョシュア・パケットだろう。「機会はグレコ・フューチャリズムでもテクノ・フューチャリズムでもない。地域に根差したフォルムを作り、土地に逆らうのではなく溶け込むことだ」と彼はXに書いた。シドニー、デンバー、ワシントン州コロンビア・ベイスンの3都市を想定したレンダリングでは、蛇行する屋根のラインが周囲の地形と調和する設計を提案している。
もちろん、データセンターの本質的な課題は外観だけではない。電力消費、水資源の逼迫、環境負荷といった問題は、どれほど美しい外壁で覆っても消えない。だが年間数千棟が新設される現実を前に、Fast Companyのネイト・バーグが指摘するように、「倉庫型のデザインは建築的に砂に頭を埋める行為」であり、退屈な外観は「負の外部性を少しでも相殺する機会を逃している」という見方には一理ある。パルテノン神殿である必要はないが、パケットが描いた蛇行する屋根が実際の丘陵に溶け込む日は、思ったより近いかもしれない。





