2026/05/19
SPARKL

DeepMind社員1,000人が「労組」結成へ、AI軍事利用めぐり

DeepMind社員1,000人が「労組」結成へ、AI軍事利用めぐり

98%が支持した「異例の結束」

グーグル DeepMind のロンドン本社スタッフが、通信労働者組合(CWU)と Unite the Union を共同代表とする労組結成を経営陣に申し入れた。The Verge の報道によると、CWU所属の DeepMind 社員のうち98%が賛成票を投じたという。

組合結成が認められれば、ロンドン本社の少なくとも1,000人のスタッフが団体交渉権を持つことになる。経営陣には10営業日の回答期限が設けられており、自主的な承認がなければ法的手続きに移行する。テック企業、とりわけAI研究の最前線でこれほどの規模の組合結成が試みられるのは珍しい。背景にあるのは、自分たちの研究成果が軍事目的に転用されることへの強い危機感だ。

「研究ストライキ」という切り札

組合側が掲げる要求は3つの柱からなる。武器開発や監視技術に関わる契約を追求しないという明確なコミットメント、AIが業務内容や雇用に影響を及ぼす場合の交渉権、そして個人の倫理的基準に反するプロジェクトへの参加を拒否する権利だ。

注目すべきは、世界各地の DeepMind スタッフが対面での抗議活動や「研究ストライキ」を検討しているという点だろう。研究ストライキとは、グーグルのAIアシスタント Gemini の改良作業を集団で拒否するというものだ。コードを書かないのではなく、「何のためのコードを書くか」を選ぶ——これは従来の労働争議とは質が異なる。

テック大手と軍の距離が縮まる中で

この動きは孤立した事象ではない。組合結成の1週間前には、数百人のグーグル社員がスンダー・ピチャイCEOに宛てた公開書簡に署名し、米国防総省との機密AI契約を拒否するよう求めていた。その直後、グーグルは OpenAI やエヌビディアとともに、米国防総省がAIモデルを「合法的な政府目的」に使用することを認める契約を締結したと報じられている。

2024年には、グーグルがイスラエル政府との軍事的つながりに抗議した50人以上の社員を解雇した経緯もある。解雇という対応は社内の不満を抑えるどころか、組織的な抵抗の土壌を育てたようだ。

技術者が「倫理的選択権」を持つ意味

CWUのジョン・チャドフィールド全国担当官は、「最前線のAI研究所で働く技術者たちが、連帯と労働組合主義という基本的な価値観に基づいて行動している」と述べた。

AI技術が社会インフラに深く組み込まれるほど、それを作る人々の判断が持つ重みは増していく。「作れるか」ではなく「作るべきか」を問う権利を制度として確保する——研究ストライキという前例のない切り札を手にした1,000人が、10営業日後にどんな回答を引き出すか。結果がどうあれ、「自分の研究が何に使われるかを選ぶ権利」という問いは、もう引っ込められないだろう。