2026/05/30
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コンゴでエボラ診療所への襲撃が3件発生、WHO緊急宣言下で広がる医療不信

コンゴでエボラ診療所への襲撃が3件発生、WHO緊急宣言下で広がる医療不信

コンゴ民主共和国では2026年5月21日以降、東部のエボラ治療施設に対する住民の襲撃が少なくとも3件発生した。WHOは同月中旬、この流行を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に指定している。

なぜエボラ診療所が襲撃されるのか

パニックとSNS上の偽情報が、医療への不信感を暴力に変えている。「エボラは存在しない」「援助団体は利益のために来ている」「有効なワクチンを隠している」といった虚偽の主張が拡散し、治療施設が攻撃の標的になった。

NPRの報道によると、5月21日に東部の治療センターが放火され、焼け焦げたベッドフレームの映像がSNSで広まった。週末までにさらに2件の攻撃が別の施設で起き、スタッフとエボラ疑い患者は混乱のなかで避難を余儀なくされた。

こうした襲撃は今回が初めてではない。国境なき医師団(MSF)スイスのミカエラ・セラフィニ会長は、2019年にも同国で自団体の治療センターが襲われた経験を持つ。当時、住民は「施設に入った患者は全員殺されている」と信じていたという。エボラの致死率が極めて高いために、医療従事者が患者を殺害しているという誤解が生まれやすい構造がある。アフリカCDCのジャン・カセヤ事務局長は「偽情報を信じているのはコミュニティの少数派だ」と述べるが、少数の暴力であっても医療体制全体を麻痺させるリスクは無視できない。

伝統的な埋葬がエボラの感染拡大を招く理由

エボラで死亡した遺体は約7日間にわたって高い感染力を保つ。だがコンゴの多くの部族では、遺体を洗い、数日間そばで過ごす弔いの儀式が文化的に欠かせないものとされている。

コンゴ民主共和国には約450の部族が存在し、葬送の習慣はそれぞれ異なる。だがセーブ・ザ・チルドレンのエボラ対応保健リーダーであるバブー・ルケンゲザ医師によれば、「遺体を引き取り、故人を弔うこと」は文化を超えた共通の価値だという。葬儀は複数日にわたることが多く、遺体を洗う儀式や、遺体のそばで夜を過ごす慣習が含まれる。

この慣習が感染拡大にどれほど寄与するかは、過去のデータが物語る。WHOの推計では、約10年前の西アフリカでのエボラ流行において、葬儀の慣習がシエラレオネで症例の80%、ギニアで60%に関与した可能性がある。今回の流行でも、襲撃事件のひとつでは住民が「伝統的な方法で埋葬するために遺体を返せ」と要求して施設に押し入った。安全な埋葬の手順では、防護服を着用した専門チームが遺体を密封袋に納め、遺族は離れた場所から見守る。だが密封された袋越しに家族へ触れることさえ許されない現実は、多くの遺族にとって受け入れがたい。

信頼回復へ動き出した地域リーダーたち

アフリカCDCや国際援助団体は、医療への信頼回復を最優先課題に据えている。地元スタッフの雇用、宗教指導者との連携、WhatsAppグループやコミュニティラジオを通じた正確な情報発信が柱だ。

カセヤ事務局長によれば、一部の地域リーダーにはバイクが支給され、広域な集落を巡回しながら偽情報を打ち消す活動が始まった。教会やラジオ局も正確な情報を届ける拠点として動き出している。MSFのセラフィニ会長は「信頼構築に時間をかけなければ、必ず裏目に出る」とNPRの取材で警告する。2019年の経験から、短期的な医療介入だけでは状況は改善しないと彼女は確信している。必要なのは地域に根ざした長期的な関係構築であり、安全な埋葬を「文化の否定」ではなく「敬意ある適応」として設計する視点だろう。

防護服と密封袋に囲まれた埋葬は、弔いの形としてはあまりに異質に映る。だがバイクで集落を巡る地域リーダーの声と、ラジオから流れる正しい知識が、その距離を少しずつ縮めていく可能性はある。