「1社集中」から「ポートフォリオ型」へ
UNICEF USAの最高慈善責任者ミシェル・ウォルシュは、Fast Companyのインタビューで若い起業家たちの間に明確な変化が起きていると語る。かつてキャリアは直線的だった。ひとつの組織で信用を積み、実績を重ね、やがてリーダーになる。だがいまのZ世代にとって、起業は「ひとつに賭ける」行為ではなく「複数を同時に回す」行為へと変わった。
背景にはテクノロジーの民主化がある。SNSとAIによって少ないリソースで事業を立ち上げ、直接ユーザーにリーチし、うまくいかなければ素早く方向転換できるようになった。複数の事業が互いを強化する「エコシステム型」の構築も広がっている。メディアプラットフォームがテック企業の価値を高め、オーディエンスと信頼の循環が異なるベンチャー間で生まれるという。ただし、何かが明確に機能し始めたらチームを組み、リソースを投入するフェーズへの移行が欠かせないとウォルシュは付け加える。
利益と社会的インパクトの境界が薄れる
Z世代の約3分の1が、非営利団体の理事やアドバイザリーグループへの参加に関心を持っているとウォルシュは指摘する。企業を作ることと社会的インパクトを生み出すことの境界線は、かつてないほど曖昧になった。
この傾向を体現するのが、米国史上最年少で国連の気候アドバイザーを務めたソフィア・キアニだ。彼女は世界最大の若者主導の気候変動NPO「Climate Cardinals」を設立する一方で、AIコマース企業Phiaを共同創業し、ビジネスポッドキャストも主宰する。一見バラバラに見える活動だが、キアニにとってインパクトは事業と切り離せない。「インパクトを構築とは別のものだと考えたことはない。私にとって、それが構築する理由そのものだ」と彼女は語る。
便利だから社会貢献を掲げるのではなく、信念から生まれた事業でなければ困難な局面は乗り越えられないとキアニは考える。
「経験を積んでから率いる」が通用しない時代
従来のリーダーシップモデルは順序の問題だった。まず経験を積む。次に信用を築く。そしてようやく率いる。だがZ世代の起業家たちは、この順序を待たない。構築しながら率い、率いながら学ぶ。
ウォルシュはこの変化に機会と複雑さの両面を見ている。エネルギーとイノベーションは豊富だが、多くの既存組織は複数のプラットフォームを横断して活動するリーダーと関わる設計になっていない。制度が個人のスピードに追いついていないという構造的な課題もある。
一方でキアニは、この世代の強みをこう表現する。「受け継いだシステムに疑問を投げかけ、異なる世界のアイデアをつなぎ、他の人が現状を受け入れたかもしれない場所に新しいものを築こうとする」。
リーダーシップは「肩書き」から「行動」へ
キアニが最近UNICEFのNextGenリーダーシップ・カウンシルに参加したことは、この世代の動き方を象徴している。特定の肩書きがなくてもインパクトは生み出せるという信念のもと、彼女は気候変動NPOからAIコマース、メディアまでを横断する。
「どんなキャリアにいても、自分の声とスキルとプラットフォームを使って、物事をより良い方向に動かせる」とキアニは語る。気候変動NPOとAIコマースとポッドキャストを同時に走らせるこの若い起業家の軌跡は、「まず経験を積め」という助言が、もはや次の世代には届かなくなっていることを静かに伝えているのかもしれない。





