2026/06/20
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温暖化でサンゴ礁の8割が白化した。生き残る「耐熱サンゴ」を米研究者が追う

温暖化でサンゴ礁の8割が白化した。生き残る「耐熱サンゴ」を米研究者が追う

2023年以降の海洋熱波は、観測史上最悪のサンゴ白化を引き起こした。世界83以上の国と地域で、サンゴ礁の8割超が被害を受けている。

「まるでヒーロー」、熱波を無視するサンゴ

熱波が世界中のサンゴを殺すなかでも、何事もなかったかのように生き続けるサンゴ礁が存在する。それを探すのが、米ウッズホール海洋研究所の海洋学者アン・コーエン(62)の仕事だ。

2026年6月、コーエンは中部太平洋のマーシャル諸島・マジュロ環礁の海に潜った。黄色い無人探査ロボット「イエローフィン」が、あらかじめ指定した座標まで彼女を導く。「最高のダイブ・バディよ」と、彼女は笑う。

水面下に広がっていたのは、現実離れした光景だった。栗色のテーブルサンゴが海底から木々のようにそびえ、その影に魚が身を潜める。鹿の角のように枝分かれしたサンゴが、マスタード色やピンク、ラベンダーのパステルを散らしながら、見渡す限りに広がっていた。「まるで不思議の国。私はアリスになった気分」と、30年間サンゴを研究してきた彼女は声を弾ませた。

かつてコーエンは、そんなサンゴを「スーパーマンか、スーパーウーマンが来て、力こぶを見せているみたい」と形容したことがある。熱波という現実のなかで、それは奇跡に近い光景だ。

耐熱サンゴはなぜ高温でも生き残れるのか

サンゴは高温ストレスを受けると、体内に共生する藻類を吐き出して白化し、栄養と色を失う。だが一部のサンゴ礁は同じ熱波のなかでも白化せず、その耐性の仕組みを科学者が解き明かそうとしている。

サンゴの鮮やかな色は、組織のなかに住む小さな藻類が作り出している。藻類はサンゴに栄養を与え、サンゴは藻類に住処を与える。だが水温が上がりすぎると、サンゴはこの藻類を体外へ追い出してしまう。残るのは栄養源を失った、ゴーストのように白い骨格だ。これが「白化」と呼ばれる現象である。

ところが、コーエンが「スーパーリーフ」と名付けたサンゴ礁は違う。周囲が白化し、死んでいくなかでも、平然と色を保ち続ける。なぜ一部のサンゴだけが高温に耐えられるのか。その答えを握る「熱ストレス耐性」の正体こそ、彼女のチームが追う核心だった。

ただし、耐性の兆しを見せるサンゴがすべて「スーパーリーフ」というわけではない。コーエンによれば、科学的に証明された能力を備えたものだけが、その名にふさわしい。耐熱サンゴの研究が温暖化対策の鍵になりうるのは、こうした強者を見つけ出し、弱った別の礁を再生させる「種」にできるかもしれないからだ。

半世紀でサンゴ礁の半分が消えた

世界はすでにサンゴ礁の半分以上を失っており、対策がなければ熱帯のサンゴ礁の9割超が今後25年で消えるとの警告もある。

サンゴを脅かすのは高温だけではない。港湾開発のための浚渫はサンゴを土砂で埋め、農地からの排水や生活排水、プラスチックごみは病原菌や過剰な栄養を持ち込む。重しをつけた網で海底を引きずる底引き網漁はサンゴ礁ごと砕き、ダイナマイト漁は数百年かけて育った群体を一瞬で粉々にする。「ヤドカリを壊すのに大ハンマーを振り下ろすようなもの」と、コーエンは言う。

だからこそ、2018年に始まった「スーパーリーフ」プロジェクトは、2021年に環境保護団体ネイチャー・コンサーバンシーやスタンフォード大学との国際的な取り組みへと発展した。耐熱サンゴを「見つける」だけでなく「守る」ことが狙いだ。標的に選ばれたのは、ベリーズ、ハワイ、そしてマーシャル諸島だった。いずれも、人間の活動を制限する海洋保護区を設ける計画を持っていた地域である。

コーエンはデータを集めること自体を目的にしない。どこを、どう守るか。その実際の決定に役立つ科学を届けることに、彼女はこだわっている。

熱波の渦中へ、ロボットを送り出す

太平洋では再びエルニーニョ現象が発生し、今秋にかけて強まると予測されている。コーエンは、熱波の最中にこそマーシャル諸島へ戻る計画を立てている。

予報官は、熱帯太平洋で再びエルニーニョ現象が形成され、今秋には強まる見込みだと警告した。「マーシャル諸島で熱波が起きる可能性は、かなり高い」と、コーエンは言う。先日見たばかりの色鮮やかな礁が焼かれる悪夢を、すでに何度も見ているという。

それでも彼女は、その瞬間に立ち会いたいと願う。出発前から、もう次の渡航計画を立て始めていた。熱波のピークにイエローフィンを送り出し、どのサンゴが生き延びるかを、この目で確かめるために。

「どのサンゴが耐えるか、見当はついている。前に何度も見てきたから。でも、確かめないといけない」。熱波が去ったあとの海で、熱に屈しなかった強者たちが、傷ついた礁を再生させる種になるのかもしれない。