2026/05/25
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元製薬社員がNYジムでカフェ開業、TikTok拡散で「第三の居場所」に育つ

元製薬社員がNYジムでカフェ開業、TikTok拡散で「第三の居場所」に育つ

パンデミック後の転身——製薬広告からカフェ経営へ

ジョリーン・ンは2021年、ブルックリンのクライミングジム「Vital Brooklyn」に通い始めた。当時は製薬会社で広告を手がけており、飲食業とは無縁だった。だがパンデミック中に料理とベーキングに目覚め、ジムのコミュニティイベントでポップアップ出店を始める。やがて屋上カフェの前任運営者が撤退し、窓に「運営者募集」の張り紙が出た。パートナーに写真を送ると、返ってきた言葉は「やってみなよ」だったという。

Eater の取材によると、飲食の知識はほぼゼロからの出発だった。開業当初はひとりで全オペレーションを回していたが、すぐに限界を感じて3人を雇う。しかしそこから「仕込み量の5倍増」「プロセスの標準化」「スタッフ管理」と、課題は雪だるま式に膨らんだ。大学時代にウェイトレスのアルバイトをしていた頃の上司に連絡を取り、人材管理のイロハを教わりながら、手探りの1年目をなんとか乗り切る。

TikTokが変えた客層——ジム会員から街の住民へ

ンが2軒目の「Georgie's」をマンハッタン・ロウアーイーストサイドのVitalジム内にオープンすると、想定外の現象が起きた。TikTokでリモートワーク向きのスポットとして紹介され、クライミングとは無縁の人々が続々と訪れ始める。ラップトップを広げて何時間も居座る「作業勢」と、運動後に気軽にコーヒーを飲みたいクライマーの共存が、日々の運営上の問いになった。

これはいわゆる「サードプレイス(第三の居場所)」を運営するすべての事業者に共通する課題だ。社会学者レイ・オルデンバーグが1989年に提唱したこの概念は、自宅でも職場でもない社交の場を指す。カフェやバー、公園がその典型だが、近年はクライミングジムやカードゲームバー、ラインダンス教室など、アクティビティを核にしたハイブリッド型が各地で増えている。ボルティモアのハイブリッドスペース「The Wren」を運営するウィル・メスターも「ある時点で場を公に委ね、何が起こるかを観察する。そこから成功の道を探る」と語る。

「未経験」が強みに変わるとき

ンの経歴は飲食業界の常識からすれば異端だ。だが専門知識がなかったぶん、「こうあるべき」という先入観に縛られず、利用者の反応を見ながらカフェの形を柔軟に変えてこられたという。オールデイ・カフェとしてのフォーマットも、客の使い方を観察しながら今も進化を続けている。

日本でもコワーキング併設カフェやジム内ラウンジは増えつつあるが、多くは「付帯設備」の域にとどまる。カフェそのものをコミュニティの核と位置づけ、利用者と一緒に場を育てていくンのやり方は、小さな事業者にも応用できるモデルかもしれない。