2026/05/25
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クルーズ船ハンタウイルス感染11人に、仏女性は人工肺で治療中

クルーズ船ハンタウイルス感染11人に、仏女性は人工肺で治療中

オランダ人夫婦の死から始まった感染連鎖

WHOが最初の感染者と特定したのは、南米を数か月間旅行していたオランダ人夫婦だった。2人はアルゼンチンで野鳥観察ツアーに参加し、行程にはゴミ処分場への立ち寄りも含まれていたという。ハンタウイルスは通常、齧歯類の排泄物を介してヒトに感染する。処分場でウイルスを保有するネズミと接触した可能性が高いとみられている。

夫婦はその後、探検クルーズ船MVホンディウスに乗船し、船上で発症した。2人とも死亡している。NPRの報道によると、今回検出されたのはアンデスウイルスと呼ばれる型で、通常のハンタウイルスとは異なり、まれに人から人への感染が起こりうるとされる。クルーズ船という閉鎖空間がこの特性と重なり、感染を拡大させた可能性がある。

アルゼンチン保健省は、夫婦が訪れた処分場などの現地調査のため専門家チームの派遣を決定した。ただし、クルーズ船が出港した地域の当局は、感染源が自国にあるとする見方に異議を唱えている。

テネリフェでの全員退避と42日間の隔離勧告

感染拡大を受け、MVホンディウスはスペイン・カナリア諸島のテネリフェ島に寄港した。乗客87人と乗組員35人の退避作業では、全身防護服と呼吸マスクを装着した職員が対応にあたり、月曜夜までに全員の下船が完了している。

オランダ南部アイントホーフェンには、オランダ国籍者のほかオーストラリアやニュージーランドからの乗客、フィリピン出身の乗組員を乗せた航空機2機が到着した。全員が隔離措置に入っている。スペインでも新たに乗客1人の陽性が確認され、マドリードの軍病院で隔離された。船に残った一部の乗組員は、オランダ・ロッテルダムに向けて航行中だ。

WHOのテドロス事務局長は、帰国した乗客に対し42日間の隔離を勧告した。ハンタウイルスの潜伏期間は1〜8週間と長く、現時点で無症状でも感染している可能性があるためだ。ただしWHOの勧告に強制力はなく、無症状者の扱いは各国の判断に委ねられている。

早期発見が生存率を左右する

パリのビシャ病院では、フランス人女性が重篤な状態で治療を受けている。感染症専門医のグザヴィエ・ルスキュール医師によると、ウイルスが肺と心臓に深刻なダメージを与えており、治療には体外で血液に酸素を供給する人工肺装置(ECMO)が用いられた。ルスキュール医師はこれを「支持療法の最終段階」と呼ぶ。臓器への負荷を軽減し、回復のための時間を稼ぐ措置だという。

ハンタウイルスにはワクチンも特効薬も存在しないが、WHOは「早期発見と治療によって生存率は改善する」と述べている。テドロス事務局長は「現時点で大規模な流行の兆候は見られない」とも強調した。感染が確認・疑われているのは船の乗客と乗組員に限られる。

42日間の隔離期間を経ても新たな発症者が現れなければ、南米のゴミ処分場からクルーズ船を経て大西洋を渡ったこの異例の感染連鎖は、6月下旬に静かに終わりを迎えるだろう。