2026/05/25
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テレヘルス大手Hims & Hers、ダイエット薬から「長寿・ペプチド」市場へ舵を切る

テレヘルス大手Hims & Hers、ダイエット薬から「長寿・ペプチド」市場へ舵を切る

テレヘルスでダイエット薬を「スマホ完結」にした仕組み

Hims & Hers は、テレヘルス(遠隔医療)を通じて処方薬をオンライン販売する米国企業だ。SNSマーケティングを武器に、従来なら医師の対面診察を経なければ手に入らなかった処方薬を、スマートフォンから数分で注文できる仕組みを作り上げた。特にダイエット薬の領域で爆発的に成長し、ワシントン・ポストが報じたように、テック業界による従来型医療への「越境」を象徴する存在になっている。

共同創業者でCEOのアンドリュー・ドゥドゥムが率いるこのモデルの強みは、医療アクセスの壁を下げた点にある。米国では専門医の予約が数週間先になることも珍しくない。待てない患者にとって、オンライン診察と即日配送の組み合わせは強烈な魅力だった。

ペプチド製剤と「長寿市場」への転換

同社が次に狙うのは、ウェルネスと長寿の領域だ。鍵を握るのはペプチド製剤である。ペプチドはアミノ酸が短く連なった化合物で、体内のホルモンや免疫機能に深く関与する。近年、抗加齢やスポーツ医学の分野で研究が活発化しており、ダイエット薬とは異なる客層──健康寿命の延伸に関心を持つ層──にリーチできる可能性を秘めている。

ドゥドゥムCEOは現在、シリコンバレーの工場でペプチド製剤の製造準備を進めていると報じられている。ただし、ペプチドが同社の事業の柱になるには、FDAの認可を得る必要がある。認可が下りなければ、この転換は絵に描いた餅に終わる。ダイエット薬市場で築いたテレヘルス基盤を「予防・長寿」に転用する構想は壮大だが、規制当局という最大の変数はまだ動いていない。

テック企業が「予防医療」に踏み込む意味

Hims & Hers の動きは、テレヘルスが「治療の効率化」から「予防・長寿への拡張」へとフェーズを変えつつある流れの一例だろう。SNSで処方薬を販売し、自社工場で製造するモデルは、従来の医療体制との摩擦を避けられない。対面診察なしの処方に対する安全性の懸念は根強く、テック企業の医療参入には常に「利便性か安全性か」という問いがつきまとう。

それでも、米国の医療費高騰と専門医不足が深刻化するなかで、テレヘルスが果たす役割は拡大する方向にある。ドゥドゥムCEOがシリコンバレーの工場で仕込む次の一手は、テレヘルス業界が「病気を治す」産業から「老いに備える」産業へ踏み出す試金石になるかもしれない。