2026/05/30
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社員37人のAIスタートアップKrea、独自画像モデルでOpenAIに挑む

社員37人のAIスタートアップKrea、独自画像モデルでOpenAIに挑む

デザインツールから「AI研究所」へ

2023年に創業したKreaは、AIでメディアを生成・調整できるクリエイティブプラットフォームとして出発した。リアルタイムAI編集ツールを業界で初めて提供し、他社のAIモデルのAPIを自社アプリに統合する手法も先駆けている。早期に黒字化を達成した。

だが、チームはやがて壁にぶつかる。Kreaがどれだけ優れたインターフェースを作っても、その可能性は基盤となるAIモデルの性能に制約される。共同創業者のビクトル・ペレスは「モデルは失敗しないように訓練されていて、常に『良い画像』を出そうとする。それがクリエイティブな用途を奪っている」とFast Companyの取材で語った

そこでKreaは、デザインツール企業からAI研究所へと自らを再定義した。シリーズBで8,300万ドル(評価額5億ドル)を調達し、独自モデル「K2」の開発に踏み切っている。とはいえ、OpenAIの1,800億ドル、アンソロピックの720億ドルという調達額と比べれば桁が3つ違う。

「勝者が決まるまで——OpenAIか誰かが黒字になるまで——オリンピックは続いている」と、もう一人の共同創業者ディエゴ・ロドリゲスは笑う。

「良い画像」の呪縛を解く

現在の画像生成AIが得意とするのは、各社が競って磨いてきた写実性だ。だがグラフィックデザインやイラストの領域では、その限界にすぐぶつかる。

Kreaのデモでは、「自転車に乗る猫」というプロンプトを自社モデルとグーグルのNano Bananaで比較している。K2の出力は手描き風のものからファンキーなものまで多様だったが、グーグル側はプロンプトを調整しても似たような塗り絵調の画像が繰り返されたという。ペレスはこの違いを「マクドナルドとミシュラン星つきバーガー店の違い」にたとえる。一方は万人を満足させようとし、もう一方は好みが分かれることを恐れない。

K2の差別化の源泉は、7か月かけて独自に構築したデータセットにある。チームは手作業でラベリングを行い、独自のワークフローで訓練を重ねた。ペレスによれば、大規模モデルの開発初期は各社ほぼ共通だが、中間・後半の訓練段階でモデルの「視点」が決まる。その工程で問われるのは計算資源ではなく、美的判断だ。

「研究者が得意なのは指標の最適化だ。でも僕たちが最適化しようとしているのは、極めて主観的なものだ」とペレスは語る。業界にはポストトレーニングの真の専門家が世界で約200人しかいないとも言われており、この段階こそがAIモデルの個性を左右する。

クリエイターのための設計思想

K2のインターフェースにも、Kreaの思想が色濃く反映されている。画像をプロンプトバーにドラッグして影響度をスライダーで調整したり、ムードボードを作成してスタイルを指定したりできる。生成後には、ユーザーの好みに合いそうな画像をAIが自動で提案するパーソナライズ機能も備わっているという。

IP保護にも踏み込んだ設計が目を引く。ユーザーが自分のスタイルデータをKreaのモデル訓練から除外でき、生成物のIPはすべてユーザーに帰属する。将来的には、AIを使ってアーティストのIP貢献度を測定し、ロイヤリティを還元する仕組みも検討しているようだ。

2,000万ドルのGPUクラスタで見えた次の一手

K2の訓練に使うGPUクラスタの年間コストは2,000万ドル。Kreaはこの予算で、K2を含む3つのモデルを訓練する計画だ。ペレスはK2を「保守的なアプローチ」と位置づける。初めてのモデル訓練で実験的すぎる手法を取り、失敗するリスクは避けたかったからだ。

「とにかく動くものを作りたかった」とペレスは振り返る。「予想をはるかに超える出来だったが、途方もなくリスクの高い賭けだった。モデルを訓練したことがなかったし、どれだけ大変かも分からなかった。めちゃくちゃ大変だったが、最終的にやり遂げた」。

ロドリゲスは、巨大企業が支配するAI業界で、小規模なAI企業がもっと連携すべきだとも考えている。Kreaは当初あるモデル企業と提携を試みたが、収益分配すら拒否されたため、完全な内製に切り替えたという。

K2の手応えを足がかりに、次のモデルではより大胆な訓練手法に挑戦する構えだ。「モデルを訓練して初めて分かることが山ほどある」とペレスは語る。37人のチームが、7か月分の手作業と美的判断を武器に次の一手を準備している