2026/08/23
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HBOドラマ『ランタンズ』がグリーンランタンを大人向けに再構築。新旧ヒーローが後継の座を争う

HBOドラマ『ランタンズ』がグリーンランタンを大人向けに再構築。新旧ヒーローが後継の座を争う
Photo by Erik Mclean on Pexels

そもそもグリーンランタンとは何者か

意思の力を緑の光に変える指輪を授けられた、宇宙規模の警察官だ。空を自在に飛び、思い描いたものを固い光の造形として生み出す。

日本ではバットマンやスーパーマンほど知られていないが、グリーンランタンは1940年にDCコミックスで誕生した古参のヒーローである。宇宙の秩序を守る「ガーディアンズ・オブ・ユニバース」と呼ばれる存在が、恐れを知らない者を選び、この指輪を与える。SF世界の警察官が魔法のような指輪を握っている、と考えるとイメージしやすい。

今回のドラマで指輪を持つのは、元テストパイロットのハル・ジョーダンだ。命知らずの飛行ぶりを買われてランタンに選ばれたが、長い年月のあいだにすっかり口の減らない無精者になってしまった。

『ランタンズ』HBO版の感想、殺人事件から始まる異色のSF刑事劇

物語は、ネブラスカ州の田舎町で起きた一件の殺人から動き出す。超能力アクションとバディ喜劇、そして古風な刑事ドラマを一つに束ねた混成作だ。

くたびれたベテラン、ハル・ジョーダンを演じるのはカイル・チャンドラー。その後継者として送り込まれるジョン・スチュワートには、イギリスの俳優アーロン・ピアーが扮する。ジョンは幼少期から両親に鍛え上げられた元狙撃手で、黒人として初のグリーンランタンという設定を背負う。ガーディアンズはくせ者のハルを彼に置き換えたいのだが、当のハルはそれを察して後輩の足を引っ張る。この新旧コンビが、宇宙人がらみの怪事件に巻き込まれていく。

脇を固める顔ぶれも厚い。地元の保安官を演じるのはケリー・マクドナルド、変身能力を持つ油断ならないガーディアンにはローラ・リニーが起用された。人間に化けた宇宙人「マンハンター」を追ううちに、田舎町の日常が少しずつきしんでいく。こうした「大人向けの陰影」は、米公共ラジオNPRの批評番組「フレッシュ・エア」によれば、1986年にさかのぼる系譜だという。フランク・ミラーの『ダークナイト・リターンズ』とアラン・ムーアの『ウォッチメン』が登場したこの年を境に、野心的なヒーロー作品は大人のテーマへ踏み込むようになった。『ランタンズ』もその延長線上にある。

なぜ「ヒーローが苦手な人向け」なのか

派手な超能力バトルよりも、正体を隠して生きる者の心理を描くことに主眼があるからだ。批評家は本作を「アメコミ・ヒーローが苦手な人に向けたヒーロー作品」と評している。

その狙いが凝縮された場面がある。ハルが、宇宙人ではないかと疑う町の住人を尋問するくだりだ。「フットボールが好きなんだろう。ネブラスカ大が初めて全国制覇したのはいつだ?」矢継ぎ早の質問に、住人はよどみなく答えてみせる。ところがハルは唐突に切り込む。「ハリー・ポッターが通った学校の名前は?」。相手は口ごもり、「知らない」とつぶやく。ハルは静かに言う。細部はすべて暗記していても、みんなが当たり前に知っていることを知らない。それこそが、自分ではない誰かを演じている証拠だと。

正体を隠して溶け込もうとする者の緊張は、黒人初のランタンとして重圧を背負うジョン・スチュワートにもそのまま重なる。批評家は彼を、シドニー・ポワチエを思わせる誠実な人物だと書いた。超能力の見せ場ではなく、「ここは自分の居場所なのか」という問いを軸に据えたところに、この作品の新しさがある。だからこそ、ヒーローものに食傷した観客の心にも届く。

1940年生まれのヒーローが緑の光の向こうから投げかけるのは、指輪の使い方ではなく、「自分ではない誰か」を演じ続ける私たちの居心地の悪さなのかもしれない。