2026/05/25
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ブルームバーグ『国が退くほど市長が重要になる』——CEOが学ぶ3都市の経営術

ブルームバーグ『国が退くほど市長が重要になる』——CEOが学ぶ3都市の経営術

ビジョンと現場を両立させる市長たち

ブルームバーグ前ニューヨーク市長は先月、ブルームバーグ・フィランソロピーズとアスペン研究所が共催したBloomberg CityLab 2026サミットで、市長の役割が急速に拡大していると指摘した。手頃な住宅、公共交通、教育、環境——かつて国が担ってきた課題の解決が、いま都市のリーダーに移りつつある。

公共交通テック企業Via Transportationのダニエル・ラモットCEOは、市長の仕事をこう表現する。「数年がかりのインフラ政策を推進しながら、同時に個々の住民のハイパーローカルなニーズにも応えなければならない」。ビジョンと現場の両立——これはまさに企業CEOが日々直面するジレンマだ。ラモットによれば、優れた市長に共通するのは「共感力と細部への注意力」、そして「データに裏打ちされた大きな夢を描く力」だという。

空き家4,200戸を消したボルティモアの「共同体戦略」

ボルティモア市長ブランドン・スコットの手法は、企業でいう「ステークホルダー経営」に近い。空き家を住宅に転換するプログラムを、市単独ではなくメリーランド州、慈善団体、地域組織BUILDとの連合で推進した。スコットは「これは私の戦略ではなく、コミュニティの戦略だ」と語る。

2020年の就任時に1万6,000戸あった空き家は、現在1万1,800戸にまで減った。4,200戸の削減は、トップダウンの号令ではなく、資金提供者・住民・NPOを巻き込んだ合意形成の成果だ。CEOが社内だけでなく外部パートナーとの連携で成果を出す時代に、この「共同体戦略」は示唆に富む。

セーヌ川に10万人が泳いだ「締め切り効果」

パリ前市長アンヌ・イダルゴは、2024年のオリンピック・パラリンピックを「締め切り」として活用した。セーヌ川の浄化は長年の課題だったが、世界中が注視する大会という期限が設定されたことで、プロジェクトに強力な推進力が生まれた。

大会直前まで水質への懸念が報じられるなか、イダルゴ自身が2024年7月にウェットスーツを着てセーヌ川に飛び込み、安全性を身をもって示した。結果としてオリンピック競技はセーヌ川で実施され、翌年には10万人の観光客とパリ市民が川で泳いだという。

企業経営でも、大型カンファレンスや製品ローンチの期日が組織を動かす「強制装置」として機能することがある。イダルゴの事例が教えるのは、外部の注目を意図的にレバレッジとして使う技術だ。

ロンドン市長が示すAI導入の「現実路線」

ロンドン市長サディク・カーンのAIへのアプローチは、テック業界の「ムーブ・ファスト・アンド・ブレイク・シングス」とは一線を画す。カーンは「速く動いて壊すのではなく、速く動いて作る——誰も置き去りにせずに」とFast Companyの取材で語っている

ロンドンではすでにAIが交通渋滞の予測や住宅課題の分析に使われている。同時にカーンは2026年初頭、住民のスキル強化と企業のAI活用による高賃金雇用の創出を目指すタスクフォースを立ち上げた。技術の恩恵を享受する側と、雇用を脅かされる側の両方に目を配るバランス感覚は、企業のAI導入責任者にとっても参考になるだろう。

テック業界が繰り返してきた「速く動いて壊せ」に対し、カーンは「速く動いて作れ——誰も置き去りにせずに」と応じた。AI導入のスピードと包摂性を両立させるこのアプローチは、あらゆる組織のリーダーにとって試す価値があるかもしれない。