2026/05/25
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マスク対アルトマン裁判、側近のメモが「AGI独占阻止」の合意を記録していた

マスク対アルトマン裁判、側近のメモが「AGI独占阻止」の合意を記録していた

2017年の内部メモが法廷へ

5月6日、マスク対アルトマン裁判の法廷で、シヴォン・ジリスが証言台に立った。ジリスは2017年からマスクの「AIポートフォリオ全体——テスラ、ニューラリンク、OpenAI」を担当し、関係者間の「ボトルネックを見つけて解消する」役割を果たしていた人物だ。

彼女が注目を集める理由は、OpenAIの共同創業者たちの議論を詳細にメモしていた点にある。アルトマン、ブロックマン、サツキバー、そしてマスク——営利化をめぐる初期の議論を記録したジリスのメモは、The Vergeの法廷レポートによれば「ブロックマンの日記以上に重要な証拠」だという。

「誰にもAGIの絶対的支配権を渡さない」

メモが明らかにしたのは、2017年から2018年にかけてOpenAIの構造転換をめぐって交わされた率直な議論だ。ある選択肢には「数週間以内に営利化へ移行する」案が含まれ、ジリス自身も驚きのコメントを添えていた。

だが最も注目すべきは、アルトマン、ブロックマン、サツキバーの3人が「絶対に譲れない条件」として掲げた一項だろう。「イーロン、あるいは誰であれ、自分たちの作るAGIを絶対的に支配する取り決めを結ばないこと」——これが「complete non-negotiable(完全に交渉の余地なし)」だったと、メモは記録する。

ジリスはマスクの資産管理担当にも「彼らは、マスクが支配権を持つ体制から離脱する保証がなければ前に進まないと言っている」と報告していた。共同創業者たちの姿勢は揺らぐ気配がなかったようだ。

取締役会の独立性が問われる構図

ジリスの証言がマスク側にとって裏目に出た背景には、彼女自身の立場の複雑さがある。OpenAIの取締役を務めながら、マスクとの間に4人の子どもをもうけていたが、その関係を取締役会に開示していなかった。共同創業者のブロックマンが父親の身元を知ったのは、報道を通じてだったという。

法廷でジリスは「マスクに情報を流していた」ことを強く否定した。しかし同時に、アルトマンに対して「マスクが話しやすい精神状態にあるとき」を伝える役割も担っていたと証言している。AI企業において、取締役会メンバーが利害関係者と未開示の私的関係を持つリスクを、この構図は浮き彫りにする。

AI統治の議論は法廷の外へ

裁判の帰結はまだ見えない。だが、ジリスのメモが明らかにした論点——非営利から営利への転換、創業者間の支配権、取締役会の独立性——は、OpenAI一社にとどまらない普遍的な課題だ。

アルトマンが取締役会に解任された2023年の混乱が示したように、AGIに向かう組織の統治モデルはまだ発展途上にある。その意味で、2017年に共同創業者たちが記した「誰にも絶対的な支配権を渡さない」という原則は、これからのAI企業が参照すべき出発点になり得るだろう。