NASAは2028年までに約1トンのローバー2台と225kgの探査ドローン3〜4機を月面に配備する計画を発表した。ローバー2台の契約額は計約4億3,900万ドルに上り、輸送にはブルーオリジンの着陸船を使う。
NASAの月面基地計画、ローバーとドローンの全容
NASA月面基地計画の第一弾として、アストロラブ社に2億1,900万ドル、ルナーアウトポスト社に2億2,000万ドルでローバー開発が発注された。いずれも重量約1トン、航続距離200キロで、地球からの遠隔操作と宇宙飛行士による有人操縦の両方に対応する。
月面輸送を担うのはブルーオリジンのBlue Moon Mark 1着陸船だ。2回の輸送契約は計2億8,040万ドルに上る。同社はより大型のMark 2着陸船で将来の有人ミッションも担う予定で、NASAの月面計画における中核的パートナーとしての地位を固めている。
並行して進むのがJPL(ジェット推進研究所)主導の「MoonFall」計画だ。高さ約1メートル、重量225キロのドローンを3〜4機製造し、ファイアフライ・エアロスペース社が月面へ届ける。Ars Technicaの報道によると、アルテミスIVの有人着陸(2028年以降)より前に配備を完了させる方針だという。
月面基地の「境界線」と宇宙条約のジレンマ
MoonFallドローンは飛行寿命を終えた後、月面基地の四隅に配置され、基地の「境界線」を示すマーカーとして再利用される。科学的に重要な区域や建設予定地の角に置かれ、レトロリフレクターによるビーコンや月面初の通信基地局としても活用される可能性がある。
しかし、この構想は宇宙法の原則と緊張関係をはらむ。1967年の宇宙条約は、いかなる国家も月面の領有権を主張できないと定めている。基地を建設しても、その土地の所有権は生じない。
NASAが主導するアルテミス協定には66カ国が署名しており、「有害な干渉」を防ぐ「安全区域」の設定を認めている。イサクマンNASA長官は境界線が安全区域に当たるかとの質問に直答を避け、「宇宙条約を十分に尊重する。月面に資産を置く他国への敬意は相互的であるべきだ」と述べた。一方、月の南極での探査と資源採掘を目指す中国は安全区域の概念に批判的な姿勢を見せている。月面のガバナンスが米中間の新たな争点として浮上した形だ。
解像度を100倍に引き上げるドローンの可能性
MoonFallドローンの第一の任務は、月面の画像解像度を現在の1メートルから1センチへと100倍に高めることだ。
人類が月面で過ごした時間は、アポロ計画の全ミッションを合わせてもわずか80時間にすぎない。半世紀以上前のデータに頼っている現状では、月面の地質や環境条件に未解明な部分が多い。ドローンは永久影領域での水氷探索、土壌の力学特性の調査、着陸候補地の詳細な地形マッピングを一手に担う。
探査機が退役後にインフラへ転じるという発想は、月面での長期的な活動を見据えた設計思想を反映している。永久影に水氷を探し当て、やがて通信塔に転じる1メートルの小型ドローンが、半世紀の空白を埋める月面基地最初の「住人」になるかもしれない。





