ケビン・オレアリーが計画する「Stratos」は約4,000ヘクタール、出力7.5ギガワット。実現すれば世界最大のデータセンターとなる。
なぜデータセンターはここまで巨大化しているのか
AI開発競争がインフラの規模を根本から変えつつある。OpenAI、アンソロピック、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトといったハイパースケーラー各社が計算資源を奪い合うなか、データセンターの経済性は「規模がなければ成立しない」段階に入った。
オレアリーはFast Companyの取材で「すべてのデータセンターがこの規模で建てられるようになる。経済原理が過酷すぎて、スケールなしには回らない」と語る。Stratosはユタ州グレートソルトレイク北側の牧草地に計画されており、2026年5月4日にボックスエルダー郡委員会が初期承認を出した。10年かけて55棟を6フェーズで建設する構想だ。
約4,000ヘクタールという面積は、マンハッタン島の約3分の2に相当する。この数字だけでも、AI時代のインフラがどれほどの土地を飲み込もうとしているかがわかる。
「灰色の箱」を拒否する設計思想
世界的建築事務所ゲンスラーが手がけた設計は、従来の倉庫型データセンターとは一線を画す。斜めのガラスファサードがモダンなオフィス空間を覗かせ、サーバーフロアの側面には階段付きの窓が点在する。
「データセンターが醜くなければならないという法律がどこに書いてあるのか」とオレアリーは言う。同氏がカナダ・アルバータ州で進める別の7.5ギガワット施設「ワンダーバレー」も同様の設計哲学で、彫刻的な外形と大きな窓面を持つ。完成すれば敷地内に2,000人以上が勤務し、天然ガス発電所、約1,200ヘクタールの太陽光発電フィールド、複合用途の「イノベーション地区」も併設される。
美しさへのこだわりは単なる趣味ではない。巨大施設への地元反発を和らげるための戦略でもある。
地元が恐れているのは水だ
ユタ州の住民が最も懸念しているのは、グレートソルトレイクへの水資源の影響だ。同湖はすでに干上がりつつあり、湖底の有毒粉塵が公衆衛生上の問題になっている。オレアリー側は「湖の水は一切使わない。閉ループ冷却システムを採用し、エネルギーも州の送電網から引かない」と主張する。
しかし反対派は収まらない。住民投票で郡委員会の承認を覆す申請がすでに提出された。進歩派NPO「Alliance for a Better Utah」が反対運動の中核を担い、オレアリーはこの団体のIP調査を行い、政治的なダークマネーとの関連を主張している。同団体は「ユタ州民が自分たちのコミュニティと子どもの未来を守りたいだけだ」と反論した。
巨大データセンターの立地問題は、エネルギーと水というAI時代の2大ボトルネックを浮き彫りにしている。
データセンター建築は「見せる時代」に入る
オレアリーの計画が実現するかはまだ不透明だ。だが「データセンターは隠すもの」という前提が崩れつつあることは確かだろう。施設の巨大化が避けられないなら、地域社会に受け入れられるデザインが立地許可の鍵になる。ゲンスラーのガラスファサードが牧草地に立つ日が来るかどうかは、住民投票の結果と、閉ループ冷却が本当にグレートソルトレイクを守れるかの実証にかかっている。





