2026/05/25
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コンクリートに埋もれたフクロウ、羽移植を経て野生に帰る

コンクリートに埋もれたフクロウ、羽移植を経て野生に帰る

コンクリートミキサーの中から救われた命

野生動物リハビリの専門家バート・リッチワルスキーが秋に引き取ったフクロウの赤ちゃんは、彼のキャリアでも見たことのない状態だった。トラック搭載型のコンクリートミキサーに閉じ込められ、顔から尾羽まで硬化したコンクリートがこびりついていたとワシントン・ポストが報じている

セメントは羽毛の構造を根本から破壊する。フクロウの飛行は羽毛表面の微細な繊維が空気の乱流を抑えることで実現する「無音飛行」であり、羽が1本損傷しただけでも獲物に気づかれるリスクが生まれる。この個体は全身の羽毛が使い物にならない状態だった。

フクロウの羽移植とは何か

鳥類の羽移植(インピング)は、損傷した羽の軸に、ドナーの羽軸を差し込んで接着する技術だ。猛禽類のリハビリでは古くから知られており、鷹匠の世界では中世から記録がある。

ただし通常のインピングは数本の風切羽を差し替える程度で済む。今回のケースでは、コンクリートが全身を覆っていたため、移植の規模ははるかに大きかったとみられる。フクロウの場合、羽の1本1本が無音飛行に最適化された特殊な構造を持つため、種が異なるドナー羽は使えない。同種のフクロウから採取・保管された羽毛を正確な角度と長さで移植する必要がある。

無音飛行を支える羽毛の精密さ

フクロウが音もなく飛べる理由は、3つの羽毛構造にある。風切羽の前縁にある櫛状の突起が気流を細かく分散し、後縁の柔らかいフリンジが渦を消す。さらに羽毛表面のベルベット状の微細繊維が残った騒音を吸収する。

この三重構造のどれか一つが欠けても、飛行音が発生してしまう。フクロウにとって静かに飛べないことは、狩りができないことを意味し、野生復帰は不可能になる。羽移植はこの精密な構造を人工的に再現する作業であり、リハビリ施設にとっても高度な技術と忍耐が求められる。

再び空へ飛び立ったフクロウ

入念な羽移植を終えたフクロウは、飛行能力を取り戻し、野生に帰っていった。コンクリートに覆われた状態から自力で脱出することは不可能であり、人間の介入がなければ確実に命を落としていただろう。

野生動物リハビリの現場では、こうした羽移植の技術が鳥たちの「第二の翼」になりつつある。次の換羽期には移植された羽も自分の新しい羽に生え替わり、手術の痕跡は消える。セメントまみれの小さなフクロウは、いま自分の羽で夜の森を滑空しているはずだ。