2026/05/30
SPARKL

セールスフォースが新卒1,000人を「AI人材」で採用、直近で5,000人超を削減済み

セールスフォースが新卒1,000人を「AI人材」で採用、直近で5,000人超を削減済み

新卒市場の寒風と1,000人のAI枠

米セールスフォースのマーク・ベニオフCEOが先週Xで予告した新卒1,000人の採用計画が、正式に発表された。新設の「Builder Program」は、同社独自のAIエージェント基盤「Agentforce」を軸に、エンジニアリング・プロダクト・営業の各職種へ新卒を迅速に配置する仕組みだ。

米国の新卒採用市場は厳しさを増している。LinkedInの調査によると、エントリーレベルの採用は前年比6%減少した。ZipRecruiterの調査では新卒の47%が「AIが自分の分野に影響を与えた」と回答しており、応募数を増やしても競争は激化する一方だという。こうした環境で大手テック企業が1,000人規模の新卒枠を設けた意味は小さくない。

採用と削減が同時に進む構図

ただし、この発表には見過ごせない文脈がある。セールスフォースはこの数年で大規模な人員削減を繰り返してきた。2026年初頭に約1,000人、2025年にはカスタマーサポート部門だけで4,000人が職を失った。ベニオフCEO自身、2025年9月に「AIツールの急速な導入で必要な人員が減った」と認めている。

削減の背景にはAIによるコスト効果がある。同社によれば、AIカスタマーサービスエージェントの導入でサポートコストを1億ドル圧縮した。業務全体の最大50%をAIが担っているとベニオフCEOは語る。つまりセールスフォースでは、AIによって不要になった職種を縮小しながら、AIを構築・運用する人材を新たに迎え入れるという入れ替えが、同じ屋根の下で進んでいる。

「AI流暢さ」が採用の前提になるとき

もうひとつ浮き彫りになったのは、大学教育とのギャップだ。ZipRecruiterの調査で「大学がAIの実務訓練を十分に提供した」と答えた新卒はわずか23%にとどまる。セールスフォースの最高人事責任者ナタリー・スカルディーノは「企業は従業員がAIに追いつくのを待つ余裕はない。だからこそ今、Builderに賭ける」と述べた

同社は採用と同時に「Emerging Talent Playbook」を公開し、他企業にもAI人材の採用・育成ノウハウを共有し始めた。AIスキルが採用の前提条件になれば、早期にAIツールへアクセスできた学生とそうでない学生の間に格差が広がりかねない。この格差は若い世代の内部だけでなく、世代間にも波及する可能性があるだろう。

一方で、セールスフォースが大学採用プログラムを通じてこれまで1万人以上を送り出してきた実績は、「AI世代」の可能性に対する具体的な賭けでもある。新卒の厳冬期にあって、AIを学び、使い、作れる人材にとっては、むしろ扉が開き始めた局面かもしれない。