2026/05/21
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アリゾナ大学卒業式でエリック・シュミットがAI礼賛、学生がブーイング

アリゾナ大学卒業式でエリック・シュミットがAI礼賛、学生がブーイング

「恐れは合理的だ」——それでもAIを推したシュミット

5月16日、アリゾナ大学の卒業式に登壇したエリック・シュミットは、スピーチがAIの話題に及んだ途端、会場の空気が一変するのを感じたはずだ。「あなたたちが人工知能を形作るのだ」と語りかけると、観客席から大きなブーイングが沸き起こった。The Vergeの報道によると、反発はスピーチの終了まで断続的に続いたという。

Business Insiderによれば、シュミットは「機械がやってくる、仕事が蒸発する、気候が壊れる、政治が分断している、自分たちが作ったわけではない混乱を受け継ぐ——そうした恐れは合理的だ」と学生の不安に理解を示した。だが直後には、「誰かがロケットの席を勧めてくれたら、どの席かなんて聞かず、とにかく乗れ」という言葉が続く。昨年AIを「まだ過小評価されている」と評した人物の発言としては一貫しているが、就職市場の厳しさを前にした卒業生には、あまりに遠い世界の話に聞こえたようだ。

なお、一部の学生は昨年浮上した性的暴行疑惑への抗議としてもブーイングを行ったと報じられている。

2週連続の「反AI」ブーイング——広がる温度差

シュミットへの反発は孤立した事件ではない。わずか1週間前、セントラルフロリダ大学(UCF)の人文学部卒業式でも、スピーカーがAIに言及した際に同様のブーイングが起きていた。2週連続で卒業式が「反AI」の場になったことは、米国の若年層の間でAIへの反感が表面化しつつあることを示唆する。

背景にあるのは、AIに対する世論の潮目の変化だ。テック企業はAI機能をあらゆる製品に組み込み続けているが、消費者の反応は冷ややかになる一方である。The Vergeが指摘するように、「シリコンバレーは空気を読めていない」という批判は、もはや一部の懐疑論者だけのものではない。

特に、これから労働市場に出る世代にとっては、AI推進論が「あなたの仕事を奪うかもしれない技術を喜んで受け入れろ」と言われているに等しい。恐れを「合理的だ」と認めながら、同じ口でロケットに乗れと説くのは、共感としては不十分だったと言えるだろう。

テック業界に求められる「聞く力」

ブーイングの嵐は、テック業界のリーダーたちに問いを突きつけている。AIの技術的可能性を語るだけで人々の信頼を得られる時代は、すでに終わったのではないか。

卒業スピーチは本来、未来への希望を語る場だ。だが、聞き手が自分の将来に不安を感じているとき、「とにかくロケットに乗れ」という比喩は希望ではなく無神経に映る。テック業界が必要としているのは、AIの恩恵を説くプレゼンテーション力ではなく、不安を抱える人々と同じ地平に立って対話する姿勢かもしれない。

アリゾナの卒業生たちが上げた声は、少なくともその対話の出発点にはなり得る。