「最初の仕事をなぜ辞めたか」で見えるもの
RETNはヨーロッパを拠点とするネットワーク企業で、過去5年間で売上をほぼ8,000万ドル(約120億円)まで倍増させた。同社CEOのオレナ・ルツェンコがFast Companyに寄稿した記事で、採用における独自のアプローチを公開している。
最初の質問は「最初の本格的な仕事を、なぜ辞めましたか?」だ。学習機会の不足に苛立ったのか、報酬への不満か、単調さに耐えられなかったのか。理由そのものに正解はない。重要なのは、その人が何にエネルギーを感じ、何に消耗するかのパターンを掴むことだという。
この問いの背景には、採用コストの急騰がある。米国の最新調査によれば、従業員1人の離職にかかるコストは平均4万5,000ドル(約680万円)を超え、前年の3万7,000ドルから大幅に上昇した。ミスマッチを防ぐ最良の方法は、スキルではなく「環境適性」を入口で見極めることだとルツェンコは主張する。
「うちの会社について何を知っていますか」の真意
2つ目の質問は、候補者の本気度を測るフィルターとして機能する。大量の求人に同じ履歴書を送りつける「スプレー&プレイ」型の応募者は、企業研究をほとんどしていない。こうした候補者は、より良い条件を見つけた瞬間に離脱する傾向が強いという。
ルツェンコが注目するのは、候補者が逆に投げかけてくる質問の質だ。「リモートワークはできますか」という表面的な質問ではなく、「売上目標を超えて成功するにはどうすればいいか」「社内昇進の実績は」「若手に発言権はあるか」といった問いを投げてくる人材は、入社前からすでに成長の設計図を描いていると見なす。
ここには採用における非対称性の問題がある。企業側は候補者を評価するが、優秀な候補者もまた企業を評価している。質の高い逆質問は、その人が「選ぶ側」として面接に臨んでいる証拠であり、受動的に職を求める人材とは根本的に異なる。
テクノロジーへの態度が「適応力」を映す
3つ目は「仕事でテクノロジーを使うことについてどう思いますか」という質問だ。全員がエンジニアである必要はないが、変化に対する姿勢は職種を問わず重要だとルツェンコは言う。
彼女が高く評価するのは、前職で義務として使ったツールを列挙する人ではなく、自発的に新しいソリューションを試した経験を語れる人だ。業務効率化のために自らツールを探し、導入した経験がある候補者は、環境の変化に動じず、困難にも柔軟に対応する傾向があるという。
実験を奨励し、チームに自律性を与える企業はイノベーションリーダーになる確率が60%高いという調査データもある。テクノロジーへの前向きな態度は、個人の資質であると同時に、組織文化との相性を測る指標でもある。
スキルは教えられる、好奇心は教えられない
ルツェンコのアプローチに共通するのは、「何ができるか」ではなく「どう考えるか」を見ている点だ。履歴書と推薦状がスキルを証明するなら、面接は思考の質と動機の方向性を確認する場だという割り切りがある。
好奇心、粘り強さ、自発性——これらは研修で身につけさせることが極めて難しい。逆に、技術的スキルは適切な環境とリソースがあれば後から習得できる。採用の優先順位を「教えられないもの」に置くという発想は、急成長フェーズの企業にとって、再現性のある判断基準になりうるだろう。





