2026/05/25
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TSMCが30年の洋上風力契約を締結、台湾の電力1割を消費するAI半導体工場

TSMCが30年の洋上風力契約を締結、台湾の電力1割を消費するAI半導体工場

1GW超の風力を30年間「丸ごと買い取り」

TSMCが契約を結んだ相手は、カナダのノースランド・パワーが開発する「海龍(Hai Long)」洋上風力プロジェクトだ。台湾海峡の中部西岸沖に位置する3つの風力サイトから、合計1ギガワット超の発電容量すべてをTSMCが引き取る。Ars Technicaの報道によれば、契約期間は30年に及ぶ。

海龍プロジェクトは2025年から台湾の送電網への電力供給を開始しており、2027年にフル稼働する予定だという。完成すれば台湾の100万世帯以上に相当する電力をまかなえる規模になる。

TSMCはこれ以前にも、デンマークのオーステッドと920メガワットの洋上風力契約(2020年)、ドイツのWPDと1ギガワット超の陸上・洋上風力開発契約(2021年)を締結してきた。再エネ調達の積み上げは、今回が初めてではない。

台湾を直撃したエネルギー危機

TSMCが再エネに急ぐ背景には、台湾が直面する深刻なエネルギー事情がある。2026年3月、中東情勢の悪化でカタールの天然ガス施設がイランのドローン攻撃を受け、生産が停止した。ブルームバーグの報道によれば、これにより台湾は通常の液化天然ガス(LNG)供給の3分の1を失った。

台湾は電力の約半分を天然ガス火力に依存しており、燃料の備蓄は通常わずか2週間分しかない。エネルギー全体でみれば、化石燃料の輸入依存率は97%に達する。ワシントンDCのシンクタンク、グローバル台湾研究所の推計だ。

台湾政府はオーストラリアや米国から代替供給を確保し、5月6日のエネルギーフォーラムでは経済部次長が「8月、場合によっては9月まで」の供給を確保したと表明した。だが停止した原子力発電所の再稼働や再エネ拡大など、化石燃料依存からの脱却は待ったなしの状況だろう。

一企業が国の電力の25%を使う未来

TSMCのエネルギー問題が台湾全体の課題と直結する理由は、その消費規模にある。国際エネルギー機関(IEA)のレポートによれば、2023年時点でTSMCの電力消費は台湾全体の約10%を占めていた。

この比率は今後さらに膨らむ見通しだ。AI向け先端チップの需要拡大に伴い、より電力集約的な製造工程への投資が加速している。S&Pグローバルの推計では、2030年までにTSMCの電力消費は台湾全体の約4分の1に達する可能性があるという。

一企業が国の電力の25%を使う——この事実は、TSMCの再エネ戦略が単なるESG施策ではなく、台湾の国家エネルギー安全保障と不可分であることを意味する。TSMCが自前で再エネを確保することは、台湾の電力網全体の負荷を軽減する効果も持つだろう。

「2040年再エネ100%」への道筋

TSMCは2030年までにグローバル事業の電力の60%を再エネで賄い、2040年には100%を目指すと宣言している。台湾政府も2035年までに洋上風力15ギガワットの開発枠を確保する計画を掲げ、官民の歩調は揃いつつある。

化石燃料の輸入依存率97%という脆弱性は、裏を返せば再エネへの転換余地がそれだけ大きいことも意味する。台湾海峡の風が、この島の電力の4分の1を飲み込む半導体工場を支える日は、2027年のフル稼働とともに現実味を帯びてくるだろう。